RACE REPORT

SUPER FORMULA

第1戦 富士スピードウェイ

一日目 予選(4月3日・曇/ドライ)

予選レポート

KONDO RACING、シーズン開幕の予選は厳しい結果に

2021年4月3日、静岡・富士スピードウェイにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権第1戦が開幕。この日はフリー走行とノックアウト予選が行われた。スーパーフォーミュラのワンメイク車両・SF19に「ORIENTALBIO KONDO SF19」の名をつけてシーズンを戦うKONDO RACINGは、予選で3号車の山下健太選手が18位、4号車の中山雄一選手が15位となり、翌日の初戦に挑むこととなる。

昨年から世界中で大きな影響を与えている新型コロナウイルス感染症の問題が引き続き残るものの、2021年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は無事スケジュールどおりに開幕を迎えた。一方、昨シーズンに続いて4号車のレギュラードライバーであるサッシャ・フェネストラズ選手は、ビザの問題があり未だ入国を果たせていないことから、富士には中山雄一選手が代わってステアリングを握ることになっている。

なお、昨シーズンはコロナ禍で開催スケジュールだけでなくレースフォーマットも変更を余儀なくされ、予選と決勝を1日で行う1Dayレースでの開催だったが、今シーズンから予選、決勝を2日で実施する2Dayレースが復活。一方で金曜日の専有走行の実施は見送られている。さらに決勝は、給油なし、タイヤ交換義務付け(使用タイヤはソフトのみ)という形で遂行されるが、レース中にドライバーが使用できる「オーバーテイクシステム」はこれまでの100秒から200秒へと倍増。抜きづらいコースはもとより、攻防戦のツールとして多いに活用することが可能となった。

鈴鹿サーキット、富士スピードウェイでの公式合同テストを経て迎えた初戦。まず、この日は午前9時から1時間30分に渡ってフリー走行が行われ、薄曇りの中でセッションが始まった。テスト時とは異なり気温、路面温度も上昇。路面コンディションを見極めながら、ドライバーとエンジニアがコミュニケーションを重ねてクルマのセットアップを進めていくが、思うようなタイムアップにはつながらず。セッション終盤にライバルたちがニュータイヤを装着してタイムアップを果たす中、KONDO RACINGの2台は自己ベストタイムの更新は果たしたものの、中山選手が17番手、山下選手が18番手と小さな伸び代に留まった。

午後2時40分、ノックアウト予選がスタート。開幕戦には全18台が参加しているが、まずQ1はその18台をA、B組に二分。各組上位7台がQ2へと駒を進めることができる。チームでは、A組に山下選手が、そしてB組に中山選手が出走することとなった。午前のセッションに比べ、気温も路面温度も上昇。うっすらと穏やかな日差しに恵まれ、気温は20度、路面温度は27度の中で各車がアタックがはじまる。

フリー走行から改めてセッティングを変更してタイムアタックに挑んだ山下選手。10分間のセッションでは、終盤に入ってライバルたちが大幅にタイムアップを見せる中、山下選手はアタックラップに痛恨の四輪脱輪。幸い、ギリギリのタイミングで再アタックは可能となり、セクター2を自己ベストタイムで通過するなど奮闘したが、いわゆるタイヤの”おいしいところ”はすでに終わっており、結果、刻んだタイムは1分23秒189。残念ながらポジションは9番手となってしまった。一方、B組に出走した中山選手は、今季からチームに加入したエンジニアとともにクルマの現状を探りつつ、セットアップを続けてアタックにトライする。試行錯誤を重ね、方向性を定めて行く中でアタックラップに入ったがタイム更新は果たせず、1分23秒256のタイムで8番手に終わった。その後、中山選手のクルマにはアタック中に燃料ポンプに不具合が発生しており、存分なパフォーマンスでの走行ができない状態だったことが判明。トラブルも相まって消化不良となる予選を終えている。

シーズン初戦は、中山選手が15位、山下選手が18位と後方からのスタートを強いられることになったKONDO RACING。翌日の決勝に向けて天気予報では雨模様と言われているが、いかなるコンディションになろうとも粘り強く少しでもポジションアップを目指し、ドライバー、スタッフが一丸となって力強く戦うのみだ。

公式予選記録

Pos. No. TEAM DRIVER Q1 Q2 Q3
1 16 TEAM MUGEN 野尻智紀 1’21.994 1’21.595 1’21.173
2 64 TCS NAKAJIMA RACING 大湯都史樹 1’22.140 1’21.779 1’21.396
3 6 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 笹原右京 1’22.517 1’22.000 1’21.463
15 4 KONDO RACING 中山雄一 1’23.256
18 3 KONDO RACING 山下健太 1’23.189

参加台数:18台 出走台数:18台

3号車・山下健太選手のコメント

山下健太 PHOTO

正直、どうなっているのかわからないんです。今回、富士で行われた合同テストの中から手応えがあったセットを持ち込んできました。一方で、セッション中もセットを変更しながら色々試してはいるのですが、なにをやっても変わることがないという状態です。基本的に言えるのは、「リアが足りない」こと。ただ、速い他のドライバーの車載映像を見るとアンダーで速い人もいれば、オーバーで速い人もいるので、僕らは基本的に土台の部分でだいぶ遅れをとっているように思います。確かにセッティングを変えれば、タイムとして0.1〜0.2秒は変化しますが、今回は他のドライバーより1秒、2秒の遅れをとっているわけで…。気温や路面温度の変化もあったでしょうが、基本的な部分で原因がわからないので、難しいですね。

明日の決勝では雨になりそうですが、なんとか味方につけたいですね。ただ、雨になっても速さが出せるかといえばそうでもなく、厳しい状態ですが、モチベーションをしっかりと保って決勝に挑みたいと思います。

4号車・中山雄一選手のコメント

中山雄一 PHOTO

今日、レースを走るにあたり、鈴鹿、富士での合同テストの時点から走れたことは確実にデータ収集を踏まえて確認できたと思います。一方、(今シーズンからチーム担当となる)村田エンジニアともども初のKONDO RACINGでの仕事なので、今はクルマの現状を把握する作業をしてきました。結果、マシンへの理解は深まりましたが、試したセットどれもが速さに繋がるものはなかなか見つけることができませんでした。今週末に向けて、「こういう方向(のセット)がいいのではないか」というものを持ってきましたが、走りはじめはあまり良いものではありませんでした。そこで、今までとは真逆のものを試したところ良いかもしれない、ということになり、その方向で予選に挑むことにしました。

フィーリングは良くなり、課題だった最終セクターでのオーバーステアも改善されたのですが、そんな中、アタックで燃料ポンプが壊れてしまい…。結果として0.3〜0.4秒近くをロスすることになりました。普通に走っていれば、Q1は通れたのではないかと思います。残念でした。まだまだ手探りな状態も残っていますが、これからもっともっといい感触を得たいと思っています。明日は雨になりそうですが、着実に色んなところを積み上げていくことが必要な中で、雨によって流れがいい方向へと変わればいいなとも思います。

3号車・阿部エンジニアのコメント

去年の状況を踏まえ、今シーズンの準備を進めてきましたが、合同テストでも結果が出ず、わかっていないことが残っています。富士では最後の最後にタイムアップできたので、その方向性で今週末のクルマを持ち込んできました。しかしながら、それもうまく行かず最後尾の結果に終わりました。普通に考えれば、Q1を通過できるはずなのですが…。原因がわかりません。

予選では、計測3周目となるアタックラップ中にコカ・コーラコーナー(Aコーナー)四輪脱輪がありました。その時点でペースを一旦落としたかったのですが、もともとこの周でアタックすべく逆算してコースインしていたので、もう1周アタックするにはペースを落とさず回ってくる必要があって、プッシュせざるを得ない状態で…。なんとかもう1周ギリギリ計測できて、セクター2でも自己ベストをマークしたのですが、最後はタイヤがタレてしまいました。明日は雨の決勝になる可能性がありそうですが、これ以上ポジションが下がることはないので、レースでなにか見えるものが見つかればとも思います。

4号車・村田エンジニアのコメント

今シーズンからチームに関わることとなり、鈴鹿と富士での合同テストを走らせる中で、いくつか問題点が見えてきました。それを正す中で開幕戦に挑むことになりましたが、テストで加えた点や見直しを行ったことで、すり合わせをしているところですが、セットも降り出しに戻っている部分もあります。それをフリー走行で探りながら確認しつつ方向性を見出すことができました。とはいえ、時間的に十分ではなかったこともあり、煮詰め、合わせ込みの作業がうまく進みませんでした。結果、予選に向けてはニュータイヤのデータ不足もあり、ピットにクルマを戻すことなくそのままアタックを続けることにしました。一方、アタック中には燃料ポンプの片側が稼働せず、長く横Gがかかる中で燃料が吸い上げられない状態になってしまいました。アタック中に大きくタイムを落としてしまいました。トラブルがなければQ2は行けたかと思います。

明日は雨の予報になっているようですが、今、ドライコンディションで見えかけたところからのアジャストになる分、様子をみることになるかと思います。

二日目 決勝(4月4日・曇・雨/ドライ・ウェット)

決勝レポート

開幕戦富士、KONDO RACINGの2台は苦い結果に

4月4日、富士スピードウェイで迎えた今シーズン最初の戦い。前日は春の陽気に恵まれたコンディションでの予選が行われたが、決勝日は朝からどんよりとした灰色の雲がサーキット一面に広がった。午前9時25分からは30分間のフリー走行がスタート。KONDO RACINGでは、3号車の山下健太選手、4号車の中山雄一選手がともにセットアップの改善、さらに午後からの天候悪化を意識してクルマの最終調整を行った。

気温17度、路面温度19度と前日の予選セッションよりも寒い天候の中、午後2時10分、41周に渡る戦いの幕が上がる。タイミング良くスタートを決めた山下選手は18位から12位へと大きくジャンプアップ。一方で前方の2台が激しい攻防線を展開していたこともあり、山下選手はこの2台の背後につけ、逆転のチャンスを伺いながら周回を重ねていった。すると23〜24周目のメインストレートで、山下選手は39号車の阪口晴南選手の背後をピタリとロックオン。1コーナー飛び込みで鮮やかに逆転を果たす。さらにその勢いで前方の選手に詰め寄るパフォーマンスを披露した。

そんな中、26周終わりでルーティンのピットインを実施。作業中は左フロントタイヤの交換に多少手間取り8.5秒の時間を要し、さらには冷えたタイヤで1コーナーをオーバーラン。ひやりとする場面もあったが、再び入賞圏内を目指して粘りの走行を続けた。

レースは終盤に入り、未だピットインを済ませていないドライバーが残る中、タフな戦いを見せていた山下選手に不運が訪れる。39周目の13コーナー入り口、とうとう降り始めた弱い雨によって濡れていた縁石に乗り、痛恨のスピン。再スタートはできたものの、後方の複数車両に先行を許し、ポジションダウン。結果、一度掴みかけた入賞のチャンスは水泡に帰すこととなり、12位でタフな戦いを終えている。

一方、15位スタートの中山選手はポジションキープでオープニングラップを終了。この時点で先行を許したドライバーのペースに合わせる形を強いられたが、2周目に逆転を果たし、さらなる追い上げ態勢に入った。だが、その後は前方車両のペースに付き合う状況となり、文字通り”我慢”の走行が続く。タイヤに熱が入ってくると、オーバーテイクシステム(OTS)を活用して幾度となく逆転のチャンスを作ろうと仕掛けるが、相手もOTSで応戦。そのまま駆け引きが続いた。レースは10周を終えると、タイヤ交換のためにピットインする車両が1台、また1台と現れる。この間、12周目を迎えた1コーナーで中山選手は14号車の背後に迫り、あと一歩のところまで追い詰めたが、惜しくも逆転ならず。2台によるバトルは14号車がピットインする24周目まで続いた。

多くのライバルたちがピットインを済ませる中、中山選手は最後までピットインのタイミングを遅らせる戦略を敢行。すでにポツポツと降り始めていた雨が本降りになればピットインし、ウエットタイヤへと交換して優位に立つ可能性に賭けていた。実際、残り12周となった午後3時前、メインストレート上ではしっかりと雨が確認できるレベルになったが、路面がしっかりと濡れるまでには至らず。逆にピットインのタイミングを見極めることがかなり難しくなってしまった。

結局、チェッカーまで残り9周となる33周の時点でピットインを済ませていないのは、中山選手を含めて3選手。うち、2位を走る20号車の平川 亮選手が38周終わりでピットインしたことから、中山選手もこれに追随。このあと、待望の雨は本降りに変わることはなく、上位入賞のチャンスは惜しくも潰えることとなり、14位でチェッカーを受けた。

開幕戦では予選から手探りの状態が続き、セットアップに悩み続けたKONDO RACING。コンマ1秒という熾烈な戦いが当たり前のスーパーフォーミュラにおいて、残念ながら厳しい結果を突きつけられることになった。続く第2戦鈴鹿は4月末の開催だけに、なんとしても早い時点でいい流れをつかみ、力強いパフォーマンスを披露したいところだ。

決勝結果

Pos. No. TEAM DRIVER TIME/DIFF LAPS Best Time
1 16 TEAM MUGEN 野尻智紀 58’30.222 41 1’23.752
2 64 TCS NAKAJIMA RACING 大湯都史樹 1.576 41 1’22.639
3 5 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 福住仁嶺 3.737 41 1’23.256
12 3 KONDO RACING 山下健太 53.967 41 1’24.589
14 4 KONDO RACING 中山雄一 56.480 41 1’24.068

参加台数:18台 出走台数:18台
WET宣言 14:56
規定周回数 36Laps

FASTEST LAP

No. TEAM LAPTIME
64 TCS NAKAJIMA RACING 1’22.639

3号車・山下健太選手のコメント

山下健太 PHOTO

決勝でのスタートは決まりました。その後、前方で2台がバトルを続けていたんですが、ペース的にはその2台より少し遅い感じではあったものの、なんとか2台についていくことはできました。結果、メインストレートでそのうちの1台の背後に付くことができたので、1コーナーにかけて逆転しました。抜いたあとは単独での走行になってからピットインし、その後も9番手で周回を重ねていました。 しかしながら、雨が降り始めた終盤に13コーナーの入り口で縁石にのって滑ってしまい…。スピンして3台に先行され、入賞のチャンスを逃しました。苦しい展開ながらもポイントだけは取れそうだった中でのミスだったので、ショックだったし悔しいですね。

レースウィークを通していろいろ取り組んだものの大きく改善することはなかったですが、良かった部分もあって予選最後尾から入賞できるところまでポジションを上げることができたので、少しは良かったとも思います。

4号車・中山雄一選手のコメント

中山雄一 PHOTO

気温や路面温度が思いのほか下がってしまい、選択したタイヤでの走行は厳しいものでした。ドライバー交代後に装着したタイヤはとりわけリアのデグラデーションがひどく、早々にグレイニングも起こる状態でした。結果、再度ピットインを余儀なくされたのですが、序盤こそペースは良かったものの、すぐに厳しい状況になりました。
今シーズンは難しい立場での戦いが多く厳しいものでした。原因を解明することが必要なので、エンジニア含めスタッフとシーズンオフの間もミーティングを重ね、来シーズンに向けてしっかり準備したいです。

3号車・阿部エンジニアのコメント

基本的に昨シーズンからそうなんですが、予選が厳しい一方で決勝になるとそれなりに走れてしまうという形なんです。今回もそういう感じでした。スタート時のポジションが後方なので、結果的には入賞圏内を狙うことはできるのですが、今回も決勝ではクルマのコンディションも多少良くなったとは思います。ただ、やはりニュータイヤを装着して一発タイムを出しに行こうという状況になるとまたタイムは伸びないんじゃないかと思いますね。まだ堂々巡りの状態ですね。

レース中のピットインは、基本的に雨が絡むであろうという悩みがあったので難しかったですね。周りもなかなか動かなかった(ピットインしなかった)し、特にトップも動けなかったし。僕らも早めの段階で動くには微妙な立場でした。結果として周りが動かないと動きにくいという状況になりました。そんな中、コース上で山下選手が逆転したクルマがピットインしたので、その後を追うようにピットインしたんですが、再び前で戻ることができたので、その判断は良かったと思います。

コース復帰後は思ったよりも今日は気温も路面温度も上がらず、タイヤには厳しい状態でした。終盤、入賞圏内で走れていたのですが、残念ながら霧雨でクルマの挙動が乱れてスピンし、入賞できませんでした。もったいなかったです。彼には予選下位からのスタートとなり申し訳なかったので、こちらとしてはいいクルマをしっかりと準備しないと。また彼もレースを通して、自身の足りない部分に気づいたと思います。

4号車・村田エンジニアのコメント

レース中のピットインのタイミングは想定していたというよりも、状況からしてどうすることもできない感じになり、最後は雨頼みみたいになりました。一方、朝のフリー走行では、決勝に向けての準備とこれまでの間に抱えている問題に対してアジャストしたものを試しました。結果として方向的はあっていたと思いますが、完成度としてはちょっと低かったかと思います。

レースでは序盤、前の選手にペースを押さえられるような形となってしまったことで我慢の展開になりました。その流れからピットインせず、ステイアウトしたというわけです。10周以降、どれくらいの台数がピットインするかと見ていたのですが、思ったほど動かなかったですね。その結果からすれば、その段階で動いたほうが良かったのかもしれません。その後も前方の選手のペースに合わせざるを得ない形で周回していている間、先にピットインしていたドライバーたちがペースアップしていたので、動くに動けない状況となってしまいました。思ったようなポジションアップができず、残念です。次戦に向けて、このあと工場にクルマを戻して見直す部分もあるので、しっかり作業して鈴鹿に臨もうと思います。

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