RACE REPORT
SUPER FORMULA
第3戦 オートポリス
一日目 予選(5月15日・雨/ウェット)
予選レポート
第3戦、雨のAP戦で思索を重ねる
早いもので開幕戦から3戦目を迎えた今シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権。今回の舞台は九州・オートポリス。阿蘇山を含む雄大な大自然に抱かれた場所に位置するサーキットだが、5月15日の予選日は梅雨入りしたばかりの雨模様に見舞われ、山々の新緑を目にする機会には恵まれなかった。この日、午前中の公式練習を経て行われた公式予選は、再三に渡る赤旗中断で都度アタックチャンスに水を差す形となった。その中でKONDO RACINGは、3号車を駆る山下健太選手が10位、また開幕戦から続いて4号車で代役参戦を務める中山雄一選手はアタック中にスピンオフを喫し、赤旗中断の原因となったことからタイム抹消に。決勝は最後尾グリッドからのスタートという結果になっている。
4月にシーズンイン、富士、鈴鹿と2戦を戦い終える中、さらなる改善と進歩を求めて尽力中のKONDO RACING。エンジニアによるデータ分析はもちろん、ハード面、ソフト面あらゆる角度からの見直しを行い、オートポリス戦の準備に取り組んできた。一方、ここは特色の強いコースレイアウトを持つサーキットだけに、予選での好位置獲得がファースト・ミッションにもなる。チームでは、まず朝の公式練習からじっくりと走り込み、午後からの予選に備える予定だった。だが、予選日を迎えたサーキットはあいにくの雨。午前9時30分にスタートした時点では雨こそほとんど降っていなかったものの、路面はウェット状態であり、走り始めからウェットタイヤを装着する。1時間30分でのセッションは、まず開始10分でコース上に停止した車両による赤旗中断となり、再開後は次第に雨脚が強まってコース上のあちこちに水が浮いて川ができるなど走行が難しい状況に。結果、大半のドライバーが出走を見送ることになる。雨はその後も断続的に降り続いたが、残り時間30分あたりからは連続走行ができるようになったため、各車最終確認のためにコースへと向かっていく。その中で、山下選手は1分40秒259のタイムで12番手、また中山選手は1分40秒775のタイムで15番手につけてセッションを終えた。
午後2時50分にスタート予定だった公式予選。だが、サポートレースのスケジュールの遅延で午後3時10分へと変更される。また、天候の悪化を懸念し、予選方式の変更が朝の時点で発表されており、通常のノックアウト方式から40分間の計時方式にて実施された。ところが、開始直前から雨脚が強まったり、霧が立ち込めるなど不安定な状態に。その都度開始時刻が遅延され、最終的にコースイン可能となるグリーンライトが点灯したのは午後3時35分だった。伸びに伸びたセッション開始にしびれを切らしたのか、その後、セッションそのものも荒れに荒れ、4度の赤旗中断を招く波乱の展開となる。そんな中、最悪のコースコンディションでの走行を回避しようと、オープンと同時に各車一斉にピットを離れアタックへ取り掛かる。一方、ピットロード出口まで距離があるチームでは、どうしてもコースインのタイミングがライバルチームよりも出遅れてしまう。KONDO RACINGもそのひとつで、山下、中山両選手は他車が立ち上げる水煙を目一杯浴びるような形となり、クリーンエアを確保できない状態での走行を強いられた。
セッション開始からわずか5分、1台の車両が100Rでコースアウト。まず最初の赤旗が提示される。車両回収を終えて15分後にリスタート。この後、アタックをはじめていた中山選手は1分40秒284へとタイムを縮め、10番手につけていた。しかし、複合カーブへと進入した際、リアの挙動が乱れてスピン。コース上でクルマがストップする。エンジンはかかっていたが再スタートまでに思いのほか時間がかかってしまい、残念ながら赤旗が提示されてしまった。結果、中山選手はこれを持って予選セッションを終えることになった。
一方、山下選手はこの2度目の赤旗中断の時点で11番手。27分強の残り時間でさらにポジションアップを狙っていたが、セッション再開のたびに、うまくアタックのタイミングを合わせきれず苦戦していた。そんな中、3度目の赤旗を経て午後4時26分にリスタートしたセッションでは、強くなり始めた雨脚をものともせず果敢にアタック。ライバル勢も自己ベストタイムを更新中で、山下選手もまた勢いある攻めの走りにも期待がかかった。だが、折しも1台の車両が100Rでスピン、コースアウト。結果、山下選手の挑戦は水泡に帰す。これにより、自己ベストタイムが1分40秒145に留まった山下選手の予選結果は10番手となった。
明日の決勝も再び雨の予報となっているオートポリス。山下、中山両選手は天候不良の中を耐え忍び、チャンスを確実につかむことでポジションアップを狙っていくことになる。
公式予選記録
Pos. | No. | TEAM | DRIVER | lap | Gap | Best Time |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 36 | Kuo VANTELIN TEAM TOM’S | ジュリアーノ・アレジ | 12/15 | 1’38.252 | |
2 | 37 | Kuo VANTELIN TEAM TOM’S | 宮田莉朋 | 9/14 | 0.085 | 1’38.337 |
3 | 39 | P.MU/CERUMO・INGING | 阪口晴南 | 11/14 | 0.174 | 1’38.511 |
10 | 3 | KONDO RACING | 山下健太 | 9/11 | 0.424 | 1’40.145 |
4 | KONDO RACING | 中山雄一 |
参加台数:19台 出走台数:19台
3号車・山下健太選手のコメント
朝の公式練習時は、走り出しからクルマはそれほど悪い状態ではなく、トップとの差を詰めるように頑張っていました。しかしながらちょっと足りない、という感じでした。基本的にはアンダーが出る感じだったのですが、走るごとに徐々に良くなっていきました。一方、予選では、朝よりもクルマの感じは良かったのですが、まだアンダーは残っていて、それよりも赤旗に何度もアタックチャンスを奪われたという感じでした。タイム的にはまだまだ行けた感じだったので、ちょっと運も悪かったという気がしますね。どうしてもピット位置が出口から遠いので、いいタイミングが取れなかったですね。また、毎回赤旗が出るときもセクター3を走っていて…というタイミングが続き、イタかったです。クルマの方向性は雨の中では見えてきました。明日の朝、30分間のフリー走行を(天候次第で)走れるかどうかわかりませんが、そこで様子を見て、決勝に挑みたいですね。予選セッションでは天候がいろいろ変わったので、どのコンディションだとタイヤがどういう風になるのかは見ることができました。それは明日の決勝にも活かせると思います。
4号車・中山雄一選手のコメント
悔しい結果になりました。今回、雨になってパフォーマンスも晴れのときよりも周りとの差がなかったので、うまく走れていました。少しずつ足りないところはあったものの、雨の中ではクルマが抱えている問題も薄れていたので、他車と同じようなペースで走れていたと思います。タイムを出したときは10番手につけていたんですが、複合カーブを走行中、左リアタイヤが白線にかかるかかからないかギリギリの状態でしたがスピンしました。セクター3は路面コンディションが良くないので、そこにクルマが乗ってしまったような状態です。(赤旗原因によるタイム抹消がなければ)10番手あたりにつけることができていたのかなと思うと残念だし、もったいないなと思います。明日は後方からスタート直後の混乱をうまくかいくぐり、ポジションを上げていけたらと思います。
3号車・阿部エンジニアのコメント
今日のような雨のコンディションであれば、タイミングがうまく合ったときにいい位置でアタックができれば前のポジションに行けたでしょう。一方でうちのチームのピット位置を考えると、いいとは言えないし、アタック中には赤旗も出たので、そういう点はもうしょうがないかなと思います。それは決してうちのチームに限ったことではないですが、いい条件だったとしても今の予選より2つ3つ上がった辺りじゃなかったかなと思います。オートポリス戦に向けて準備したものに関しては、今回が雨になってしまったのでまだわからない部分もありますが、いきなり良くなってトップに立つということはないので、一歩ずつ詰めていくという意味では今日は悪くなかったと思います。明日は真ん中からのスタートですが、少しの雨が続く中できちんと走ってくれるだろうし、今日もマージンをもって走ってくれていたので明日もしっかりと他車についていって、いい戦いを見せてくれたらと思います。
4号車・村田エンジニアのコメント
オートポリスに向けて、インターバルの間にいくつか手を加えました。持ち込み自体はウェットの中、そんなに悪くはなかったですね。予選はタイミングが難しかったですね。ピットから出口までの距離があるので、出ていくまでに他車がコースインしてしまい、思うようなタイミングでアタックができませんでした。アタックラップのときはコーナー進入でスピンして回ってしまい……。残念ながら終わってしまいました。ウェットタイヤの”おいしい”部分が少ない点や、タイヤの内圧を上げて調整したことでタイヤのタレが早まったかもしれません。難しかったですね。決勝はクルマ的にもうワンステップ確認しつつ、データをしっかりと取りつつ、粘り強く走ることで結果を残せたらと思います。
二日目 決勝(5月16日・雨/ウェット)
決勝レポート
雨による翻弄続くオートポリス。決戦は赤旗終了
九州北部の梅雨入り2日目となる5月16日、大分・オートポリスでの第3戦決勝は、前日から続く雨、霧、そして強風に翻弄されることになった。結果、レースは13周目に赤旗中断となり、そのまま打ち切り終了。KONDO RACINGの3号車山下健太選手は11位、4号車中山雄一選手は15位の結果となった。
予選日は時折強い雨と深い霧に見舞われたサーキット。午後からのアタック中も不安定なコンディションとなり、理想とするタイミングでのアタックチャンスを構築できずに終わったKONDO RACINGにとっては、フラストレーションの溜まる一日でもあった。一方、決勝日になっても悪天候は変わらず。濃霧に加えさらに台風のような強風が吹き続けた。その中で、まず午前10時20分から30分間を予定していたフリー走行は中止となり、代わって決勝前の午後1時30分から20分間のウォームアップ走行が設けられた。だが、その後も山間部にあるサーキットには強風を伴った霧が立ち込め、ウォームアップ走行は午後2時スタートまでディレイ。ようやく走り出した各車だったが、開始7分を過ぎて1台の車両がコースアウト、赤旗中断を招いてしまった。結果、走行はこれをもって終了となり、不安要素を残す形で決勝を迎える。
ダミーグリッドに勢揃いした全19台。強い風は吹き続け、一旦止んでいた雨も再び落ち始める。その中で午後2時55分、フォーメーションラップを経てレッドシグナルが消灯、過酷な戦いが幕を開けた。スタート直後、1コーナー進入で5台の車両が接触。その背後にいた山下選手は行く手を阻まれコース外へと逃れたが、この影響で大きくポジションを落としてしまう。逆に、中山選手は混乱で前方が開いたことでポジションアップを果たした。また、この波乱を受けてコース上にはセーフティカー(SC)が出動。4周終了をもって再スタートとなったが、この際、中山選手はファイナルコーナースタンドで痛恨のコースアウト、ポジションを下げてしまう。SC明けは、山下選手が15番手、中山選手は16番手から再び追い上げを開始。中でも山下選手は前方車両と僅差のポジション争いを繰り広げ、オーバーテイクシステムを使いながら1台、また1台と逆転に成功。さらに他車のスピンもあり、10周目には12番手までポジションを戻したが、11周目走行中に突如として大粒の雨が落ち始めたために再びセーフティカーがコースイン。すると、コース上の安全を最優先してか、13周目には赤旗が提示されてレースが中断した。
この時点で走行を続けていた15台の車両がコース上で一列となって停止。この後、レースが再開まで暫し時間を要したが、午後4時6分には20分からSC先導による再スタートが宣言され、タイヤ交換や内圧調整の作業が可能となった。ところが午後4時15分、再びレース再開がディレイ。この間、雨は上がっていたが強い風は依然としてコース上を吹き抜け、霧も深まる状態に。結果、スタートから1時間30分強、午後4時30分に大会審議委員会がレース終了を宣言。これをもって大荒れだった第3戦の決戦は、再開が叶うことなく幕を下ろすこととなった。なお、赤旗の提示が13周走行中であったため、レギュレーションに則り、レースは11周終了時の順位によって決定。山下選手はこの時点で12位だったが、前方車両がタイム加算のペナルティで後退、代わって11位の結果となった。一方、中山選手は15位のままながら、SC中のコースアウトに対するペナルティとして結果に対し5秒加算が課せられることになった。
終始不安定だったコンディションの中、しぶとくサバイバルレースを続けたKONDO RACINGの2台。今シーズンの序盤は思わぬ空回り状態で、現時点で欲しい結果を残せていない。シーズン折り返し戦にあたる第4戦SUGO大会は、およそ1ヶ月後。この間、改めて様々な角度からの見直しを行い、入念な準備をもって次なる戦いを目指すことになる。
決勝結果
Pos. | No. | TEAM | DRIVER | TIME/DIFF | LAPS | Best Time |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 16 | Kuo VANTELIN TEAM TOM’S | ジュリアーノ・アレジ | 23’54.340 | 11 | 1’43.536 |
2 | 64 | P.MU/CERUMO・INGING | 阪口晴南 | 7.520 | 11 | 1’44.564 |
3 | 51 | Buzz Racing with B-Max | 松下信治 | 7.754 | 11 | 1’43.605 |
11 | 3 | KONDO RACING | 山下健太 | 38.73 | 11 | 1’45.821 |
15 | 4 | KONDO RACING | 中山雄一 | 52.31 | 11 | 1’45.798 |
参加台数:19台 出走台数:16台
規定周回数 30Laps
FASTEST LAP
No. | TEAM | LAPTIME |
---|---|---|
16 | Tomoki Nojiri/MUGEN | 1’43.205 |
近藤監督のコメント
現場に嵐を持ってきたでしょう、と言われてしまいましたが、今日の荒れたコンディションは仕方ないですね。ただうちは開幕戦から結構低迷していたのですが、ここへ来て阿部、村田両エンジニアも少し感覚を掴みはじめているように思いました。ドライコンディションで走ってみたらもう少しどのくらい感覚が戻ってきたか試せたのでしょうが、今回はあいにくの雨になってしまい……。残念でした。一方、ドライバーふたりも徐々に手応えがあったようです。ただベストな状況まではまだまだ遠いとも言えますね。僕も工場でのミーティングに参加し、チームが空回りしている状態の引き締めをしてきました。リザルトが出ないと、どうしても「クルマか、人か」という話になるのですが、そこをうまく調整することが僕の役目でもあるので、まずはチームワーク、中でも個々のチームスタッフの体制を見直すなどしてうまく回していきたいですね。ギアがひとつうまく噛み合えば、大丈夫!取り戻せます!改めてスイッチを入れ直し、表彰台を目指せるよう頑張ります。
3号車・山下健太選手のコメント
スタート自体もあまり良くなかったのですが、1コーナーの進入で位置取りがうまくいかず、さらに前のクルマがスピンしてしまったこともあり、行く場所がなくなってしまいました。避けるためにコース外を走ることになり、ポジションを落としてしまいました。追い上げ時にはオーバーテイクシステムを使って2台は抜けたのですが、その後、前にいた2台とは僅差の戦いになりました。明らかにこっちのペースが良かったので抜けるかなと思っていたのですが、その後に雨がひどくなってセーフティカーが入り、(その後の赤旗で)レースが終わってしまいました。赤旗で停止している間に他車のタイヤの状態と見比べたところ、こっちのほうが良かったので、レースがまだ続けばチャンスがあったのかなと思うと残念です。中盤戦に向けてしっかりとポイントを取っていかないといけないと思うので、頑張ります。
4号車・中山雄一選手のコメント
レースウィークではトライすること全部がうまく行かず、スタートも失敗しました。ただ、1コーナーでの混乱をうまくかいくぐり、12位まで上がることができました。ところがそのあと、(SC終了間際による加速中に)予想外にタイヤがグリップせずにコースアウトしてしまい、元の順位の14番手に戻ってしまいました。前の集団について走ることができていたのですが、急にタイヤがグリップを失い、後方の自分だけがコースアウトしてしまった感じです。その後は赤旗中断となりレースを終えたのですが、SC走行中のコースアウトによるペナルティでタイム加算されたので、15位に終わってしまいました。決勝では走り出して、もうちょっといい感じで戦えるかと思ったのですが、コンディションも悪くフィーリングも少し外れてしまった感じでした。
3号車・阿部エンジニアのコメント
スタートが不運でした。山下選手自身もそう言ってました。流れが悪いとこういう感じですね。ペースもそんなに悪くなかったと思います。赤旗で停止しているときに周りのタイヤと見比べましたが、うちは前後ともにきれいな状態でしたし、前のクルマよりもペースが良かったので、あのままレース続行であればもう少しポジションを上げることができたんじゃないでしょうか。状況を考えると仕方ないですね。とりあえず今回の戦いに向けてやってきたことが、ドライコンディションで走れていないのでなんとも言えませんが、ウェットに関してはもう少しなんとかなると思うので、そういう点では今回は良かったと思います。SUGO戦でもその流れをもとに、いい兆しが見られたらいいなと思います。
4号車・村田エンジニアのコメント
雨がすべてでした。今のウェットタイヤになってからレースで長く走ったことはなかったので、ちょっとタイヤの内圧などの見極めがわからないままでした。周りも同じような感じだったとは思いますが、うちは途中からフロントタイヤが利かなくなってしまい……。結果、ペースを上げることができなかったようです。なぜこういう状況になったかは今度の課題ですね。急にペースが落ちるようなこともあったようですが、正直どういう状況になっていて、なにが正解なのかまだ見えません。次はシーズン4戦目になりますが、やるべきことが山積みなので、しっかり準備していこうと思います。