RACE REPORT

SUPER FORMULA

第6戦 ツインリンクもてぎ

一日目 予選(10月16日・曇り~雨/ドライ~ウェット)

予選レポート

フェネストラズが復帰。待望のレギュラー体制で再出発!

10月16日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦の予選が栃木・ツインリンクもてぎにおいて行われ、KONDO RACINGでは念願の来日を果たしたサッシャ・フェネストラズ選手が今シーズン初レースに挑むこととなった。第6戦にしてようやく本来のチーム体制が確立したチームは、不安定な天候に翻弄されつつも3号車の山下健太選手が奮闘、予選4位を獲得した。一方、4号車のフェネストラズ選手は久々のレース参戦に戸惑ったか、予選で思うようなパフォーマンスを発揮できず17位の結果となった。

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、外国人の日本への入国が規制されており、フェネストラズ選手の再来日にも長い時間を要することになった。だが、8月のオリンピック・パラリンピック開催が終了、また日本国内ではワクチン接種が進んだことで感染者数が減少したことも追い風となり、9月末、ついに日本へと戻ってきた。なお、フェネストラズ選手は、特別措置による入国に対して尽力してくれた多くの関係各位に感謝の意を表し、また日本を離れていてもなお応援してくれるファンの気持ちに応えるべく、ベストを尽くしたいと意気込んだ。

その気持ちが形となったのか、午前9時10分から1時間30分にわたって行われたフリー走行では、早々から上位グループに名を刻んだフェネストラズ選手。開始から1時間を過ぎると1分30秒546の自己ベストタイムをマーク、この時点でトップへ。ブランクを感じさせない走りを見せ、さらに午後からの予選に向けてセットアップ作業に取り組み、最終的に5番手でセッションを終えた。一方、前回のもてぎ戦で厳しい結果に甘んじた山下選手。今大会を前に入念なミーティングを行ない、今大会に挑んでいる。セッション早々、クルマに不具合が見つかり、思いのほか作業時間を取られることになったが、着実にタイムアップを果たして1分31秒172の自己ベストタイムをマーク。ポジションこそ14番手に留まったが、セットアップを煮詰める作業を続け、予選への準備に勤しんだ。

迎えたノックアウト予選。朝から曇天模様だったサーキットは、少しずつ下り坂の天候となり、時折冷たい風に乗って霧雨が降る状態となる。午後1時35分、Q1・A組のセッションがスタート。この時点で気温20度、路面温度24度のコンディションと、前回のもてぎ戦とは状況が大きく異なる中、まずA組に山下選手が出走する。ニュータイヤでのアタックを前に、コース上では1台のクルマがクラッシュし、赤旗中断になったが、再開後にニュータイヤでのアタックを開始した山下選手は、残り3分でのワンアタックに集中して1分31秒088の好タイムをマーク。結果、トヨタエンジンユーザートップとなる4番手でQ2進出を果たした。一方、今シーズン初のノックアウト予選に挑んだフェネストラズ選手はB組で出走。しかし、天候がいっそう落ち着かず、ついに細かい霧雨が落ち始めた。不安定なコンディションの中でフェネストラズ選手は渾身のアタックを行うも、刻んだタイム_1分30秒998は9番手。残念ながらQ2進出の上位7台に残ることは叶わなかった。

迎えたQ2・A組に出走したのは7台。上位4台がQ3進出可能となる。まずスリックタイヤでコースインした山下選手だが、コース上で霧雨を確認すると、レインタイヤ装着を敢行すべくピットに舞い戻る。これが結果として奏功し、アタック2周目で1分41秒478をマーク。トップタイムでQ3進出を決めるパフォーマンスを披露した。いよいよ最後のQ3。全8台でのアタックは、山下選手にとって今シーズン初の出走となる。8台のうち7台がレインタイヤでコースインしたが、この時点の路面はスリックタイヤでのアタックは難しく、またレインタイヤでのアタックも1周が限界、という極めて困難な状況。ライバルとのタイミングを見計らい、アタックに向かった山下選手は1分37秒270をマークして3番手に着け、ピットに帰還した。だが、この時点でアタック中だった他車が山下選手のタイムを上回ったため、山下選手は4番手から明日の決勝を迎えることに。惜しくもトップ3入りは逃したものの、トヨタエンジンユーザーとしてはトップから、またシーズンベストでのスタートを迎えるだけに、なんとしても優勝を目指して奮闘したいところだ。また、フェネストラズ選手も、久々の決勝で着実な走りを見せることで、チームとして最終戦への足がかりを構築したい。

公式予選記録

Pos. No. TEAM DRIVER Q1 Q2 Q3
1 15 Red Bull MUGEN Team Goh 大津弘樹 R1’30.701 1’51.211 1’32.317
2 1 TCS NAKAJIMA RACING 山本尚貴 R1’30.421 1’41.376 1’36.847
3 16 TEAM MUGEN 野尻智紀 R1’29.757 1’41.056 1’37.141
4 3 KONDO RACING 山下健太 1’31.088 1’41.478 1’37.270
17 4 KONDO RACING サッシャ・フェネストラズ R1’30.998

参加台数:19台 出走台数:19台

近藤監督のコメント

近藤監督 PHOTO

サッシャ(フェネストラズ)がチームに戻ってきたことで、チームの雰囲気がよりいっそう良くなりました。朝のフリー走行でも速さを見せましたが、久々に戻って来たにも関わらず、いいパフォーマンスを見せてくれてうれしく思います。だからこそ、欲が出たのかもしれません。予選では、色々セッティングを考えて挑んだようですが、うまくはまりませんでした。不安定な天候も影響したかもしれません。日本でのレースが再開できて大きな嬉しさを感じているし、朝のタイムも良かったのでしょうが、このスーパーフォーミュラでのシビアな戦いという現実を目の当たりにすることになりましたね。

一方、サッシャが速さを見せたことで、(山下)健太は”お尻に火がついた”ようで……。相乗効果が出て良かったかもしれません。コンディションを味方につける運もあって、チームにもいい風を運んでくれました。健太にはここでなんとしても表彰台に上がってほしい。でもチャンスは存分にあると思っています。レースは明日の天候次第ですが、レギュラーメンバーが揃ったことで、明日からまた新たなスタートを切るという気持ちでがんばります。

3号車・山下健太選手のコメント

山下健太 PHOTO

朝のフリー走行でもう少しタイムを上げられるかと思ったのですが、予選に向けては雨にならないと思っていたので、まずQ1はドライセットで挑みました。Q2では、霧雨が降り始めたのでタイヤをウェットにするためピットインしてアタックをしたのですが、これはうまく行きました。結果、今シーズンはじめてのQ3に行くことになりましたが、ピット付近ですでに雨が降っていたので最初からウェットを着けてコースインしました。ただ、1周して状況を見たらスリックでも行けるかなと思い、タイヤ交換したかったのですがもう時間がないという判断をして、そのままアタックを続けました。

4番手からの決勝になりますが、今年は苦しい状態が続いていたし、今日も正直ドライコンディションが続いていたら、ここまで来れたかどうかわかりません。とはいえ、チャンスをうまく活かせたことは良かったし、アタック自体もうまくできました。明日も難しいコンディションになりそうですが、その中でうまくやれば勝てると思うのでがんばります。

4号車・サッシャ・フェネストラズ選手のコメント

サッシャ・フェネストラズ PHOTO

今日、久しぶりのレース参戦になりましたが、その中で朝のフリー走行では手応えを得ることができました。終盤、雨が降り出す前にニュータイヤでのアタックをしたことで、いいタイムも出すことができてラッキーでした。一方、予選は難しかったですね。クルマのバランスやトラクションに悩みました。思うような予選結果を残せず残念です。しかしながら、ようやくスーパーフォーミュラのレースに参戦できることが叶ったことはとてもうれしく思っていますし、新しく村田エンジニアと一緒に仕事ができることを楽しみにしています。まだ2セッションしか仕事をしていませんが、コミュニケーションを取りながらいいクルマを作っていきたいですね。これまでと異なるアプローチで仕事を進めることも大変興味深いです。

明日の決勝は後方からのスタートなので、正直厳しい展開になると思います。もてぎは抜きどころが少ないコースレイアウトですが、ベストを尽くして少しでもポジションアップを果たしたいと思っています。

3号車・阿部エンジニアのコメント

Q2でのタイヤ交換の判断は(山下)健太がいい判断をしてくれました。コース上のことはドライバーしかわかりませんから。いい選択をしてくれました。Q3ではもう雨になっていたのでウェットで行きましたが、ドライ(スリック)で出て行って、状況を見てウェットに換えるという判断もあったかと思います。難しい中でのアタックでしたが、その中でトヨタエンジン搭載車としてトップを獲れたので良かったのかなと思います。

この前のもてぎが期待倒れだったので、レース後に健太と話をすることで、いろいろクルマ作りを進めてきました。かなり色んなことに取り組んだので、正直もう少し結果が出たのではないかと思う気持ちもあります。ただアベレージとしてはこれまでよりもいいところあるのは確かです。ドライそして今日のようなダンプコンディションでも走れることがわかったので、結果としてはいい一日でした。

4号車・村田エンジニアのコメント

朝のフリー走行では暫定でトップタイムをマークしましたが、予選Q1・B組のアタックを終えてクルマを降りると、「ノーグリップ」という回答でした。現在、原因を調べていますが、結果として予選に向けてのアジャストがいい方向に働かなかったのではないかと思います。データを見直し、どう決勝に向けて調整するかを考えているところです。

明日は雨の可能性も残っており、どういう展開になるかわかりませんが、最終戦に向けても今回しっかりとデータを収集したいと思います。

二日目 決勝(10月17日・曇り~晴れ/ウェット~ドライ)

決勝レポート

波乱に次ぐ波乱。難しいレースながら、活路を見出す一戦に

シーズン終盤戦を迎えた今年の全日本スーパーフォーミュラ選手権。10月17日、ツインリンクでの第6戦の決勝レースは前日から降り始めた雨の影響を受け、不安定なコンディションでの幕開けとなった。その中で、KONDO RACINGの3号車山下健太選手が4位、今季初レースを迎えた4号車サッシャ・フェネストラズ選手が17位から35周の戦いに挑んだ。レースは度重なるセーフティカーの導入などで落ち着かない展開となり、山下選手が8位、フェネストラズ選手は13位で戦いを終えている。

気まぐれな霧雨によって難しいコンディションでの予選アタックとなった今大会。そのまま本格的な雨へと変わり、決勝の朝を迎えてなお雨が残った。午前10時50分から始まった30分間のフリー走行では、コースコンディションに合わせたセッティングで周回を重ねつつ、その一方で、午後に向けて回復傾向にある天候を意識したセットアップを行うなど、慌ただしく時間が流れた。その中で、セッション開始から11分、さらに残り時間およそ10分の時点でそれぞれS字カーブにできた川に乗った形でコースアウト、グラベルに止まったクルマを回収するために赤旗が提示されることになったが、山下、フェネストラズ両選手は着実にメニューを消化しつつ、タイムアップにも成功。山下選手は1回目の赤旗直前に暫定トップに立ち、またフェネストラズ選手はチェッカーが出されたタイミングでタイム更新を果たしてトップへ。結果、KONDO RACINGがワン・ツーに立つ形でセッションが終了している。

その後、空模様は緩やかに回復。もてぎ上空もやや明るさを取り戻したが、依然としてコース上はウェットの状態。決勝直前の8分間のウォームアップ走行ではウェットタイヤで出走し、このままレースを迎える。気温14度、路面温度17度と前日より数値が下がる中、セカンドローからスタートを切った山下選手は、3コーナーで背後の39号車に先行されるも、5コーナーで39号車と16号車のバトルをかいくぐって3番手へとポジションアップに成功。一方のフェネストラズ選手もスタートを決めて14番手へと浮上した。

ペース良く周回を続ける中、山下選手は再び後続の39号車とバトルになり、6周目にはその差が1秒を切る状況へ。そして8周目、オーバーテイクシステムを使った39号車に対し、3コーナーで逆転を許した。その後、山下選手は急激にペースダウン。ウェットタイヤでの走行が厳しいことから、9周終わりでピットイン。スリックタイヤへ交換した。また、13番手からペースアップすることが難しく、山下選手と同じ症状にあったフェネストラズ選手もピットに戻り、タイヤ交換を実施した。

ライバルに先んじて作業を終え、コース復帰を果たした2台。だがその翌周、不安定な路面にフェネストラズ選手がまさかのコースアウト。5コーナーでスピンを喫し、グラベルにスタックしてしまう。なんとか自力でコース復帰はしたものの、時間がかかったことでコースにはセーフティカー(SC)が導入される事態となった。コースクリアを経てレースが再開したのは13周終了時。このタイミングを利用して続々と上位陣がタイヤ交換のピットインしたため、ひと足先にピット作業を終えていた山下選手には追い風とならず、12位からの追い上げを強いられる。また、フェネストラズ選手は1周遅れの18位から挽回を目指した。

レース中盤、ともにスリックタイヤでの攻防戦でじっくりと逆転のチャンスを伺いたいところだったが、17周目の2コーナーで1台がクラッシュ、2度目のSCが導入される。その後もスリックタイヤでの追い上げにつながらないフラストレーションが影響してか、レースはなおも荒れた展開を見せる。そして20周終了時点でリスタートを迎えたが、上位グループに割って入っていた周回遅れの64号車がポジションを譲るためにスロー走行。だがこれが後続車に混乱を招くこととなり、3コーナー先で3台の車両が単独スピンや接触によって次々とクラッシュ。再びSCがコースに入った。

3度目のSCランは24周終了時点で終了。残り11周によるバトルはさらに激化。波乱続きの荒れたレースでも集中力を切らすことなく山下選手は8番手、またフェネストラズ選手が13番手で周回を重ねていく。中でも山下選手は再三にわたり前方車両に詰め寄るパフォーマンスを見せたが、もてぎは抜きどころが少なく、惜しくも逆転は叶わなず。だが、両選手とも最後まで粘りの走りを見せ、最終戦につながるいい流れの中でタフな戦いを終えている。

最終戦は2週間後。鈴鹿がその舞台となる。今大会でようやくポイント獲得を果たした山下選手、そしてスーパーフォーミュラでの参戦が叶ったフェネストラズ選手の二人による渾身のパフォーマンスに期待が集まるのは言うまでもない。

決勝結果

Pos. No. TEAM DRIVER TIME/DIFF LAPS Best Time
1 15 Red Bull MUGEN Team Goh 大津弘樹 1:09’37.200 35 1’32.570
2 39 P.MU/CERUMO・INGING 阪口晴南 1.706 35 1’32.717
3 6 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 牧野任祐 5.267 35 1’32.918
8 3 KONDO RACING 山下健太 12.707 35 1’33.434
13 4 KONDO RACING サッシャ・フェネストラズ 1Lap 34 1’33.423

参加台数:19台 出走台数:19台
規定周回数 35Laps

FASTEST LAP

No. TEAM LAPTIME
64 Toshiki Oyu / TCS NAKAJIMA RACING SF19 IMPUL 1’31.422

近藤監督のコメント

近藤監督 PHOTO

今日は残念なレース展開になってしまいました。(山下)健太にも勝てるチャンスがあったかもしれませんが、天候の回復が思ったより早くてレインタイヤが思っていたよりもたなかったようです。予定より早めのピットインになりました。ただ、予選やセッション中の走りを見る限り、二人のドライバーにはいい流れがあったと思います。これは最終戦への期待につながりますね。今回復帰したサッシャ(フェネストラズ)は長らく走れなかった思いが強すぎたのか、貪欲になりすぎて気持ちの焦りも感じました。一度レースをしたことで落ち着きも戻るでしょうから、鈴鹿では速さも強さも見せてくれるのではないでしょうか。何よりもうれしかったのは、チームとして復調の兆しを見せられたことです。最終戦に向けて、もうひとがんばりしたいと思います。。

3号車・山下健太選手のコメント

山下健太 PHOTO

決勝直前のスタート前走行で、レインタイヤでのグリップが得られず内圧を上げて行ったのですが、思ったより早く路面が乾きはじめてタイヤがズルズルになってしまいました。タイミングとしては予定より早かったのですが、スリックタイヤに換えてコースに戻ったのですが、すぐにセーフティカー(SC)が出て……。(SCを利用してピットイン、タイヤ交換を行ったライバルに対し)ポジションを下げてしまいました。リスタートで何台か抜くことはできましたが……。一方、レースウィークを通して、これまでいろいろエンジニアといっしょに考えてきたことにトライして、いい方向にも進んでいると感じました。レインでもフリー走行でいいタイムを出すこともできたので、成果は出ていると思います。この流れをもって最終戦の鈴鹿に挑みたいです。

4号車・サッシャ・フェネストラズ選手のコメント

サッシャ・フェネストラズ PHOTO

先が読みにくい路面コンディションでのレースになり、またレースそのものも難しい状況になりました。どのドライバーにも言えたことですが、僕自身久々のレースだっただけに余計にタフな戦いでした。スタートでのウェットタイヤのデグラデーションが思った以上にひどく、予定より早めのピットインでウェットタイヤからスリックタイヤに交換することになったのですが、冷えたスリックの内圧が低かったのか、コントロールが難しくて。スピンしたのは僕のミスであり、悔しいのですが、またひとつ大きな勉強ができたと思っています。今シーズンはもう鈴鹿でのレースしか残されていませんが、とにかくしっかりとベストを尽くし、いい戦いがしたいです。ポイント獲得目指してがんばります。

3号車・阿部エンジニアのコメント

タイヤのウォームアップを考えて内圧を調整したのですが、早く上がってしまいましたね。決勝での路面はもっと濡れているかと思ったのですが、結果的に予定を早めてピットインすることになりました。ただ、これまでうまく行かなかったことに対し、今回はまだいいところも見せられたし、ポイントを獲ることもできました。この流れで鈴鹿をうまく戦うことができれば、次のシーズンにもつながって行くと思います。

4号車・村田エンジニアのコメント

今シーズンはじめてのレースを戦う中、難しい部分もあったようですが、さらにミーティングを重ねてクルマを作っていく必要があると感じました。ドライバーのコメントをしっかり分析し、もてぎで得たデータをベースにして最終戦への準備を進めていきたいと思います。

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