RACE REPORT

SUPER FORMULA

第5戦 スポーツランド SUGO

一日目 予選(6月18日・晴れ/ドライ)

予選レポート

山下選手、フェネストラズ選手、共に決勝に向けて予選で手応えを得る

8シーズン前半戦の第5戦を迎えた今シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権。今回の舞台は杜の都・仙台からほど近いスポーツランドSUGO。長らく着手していた改修工事が完了し、リニューアルしたサーキットで迎える初のビッグレースとなる。その中でまずKONDO RACINGは、予選で躍進を見せることとなった。

予選日は朝から初夏を感じる天候となったSUGO。午前9時10分からのフリー走行が始まると、気温25度、路面温度は早くも36度をマーク。午後からの予選を意識しながらセットの確認作業を行った。昨シーズンは、コロナ禍で来日が見送られ、SUGO戦を欠場した4号車サッシャ・フェネストラズ選手は、SUGOでのフォーミュラレースのフィーリングを掴もうと、精力的に周回を重ねることになった。また、3号車山下健太選手も持ち込みのセッティングを確認すべく、頻繁にピットインを繰り返しながら作業を進めていく。セッション終盤、計時モニターのシステムエラーにより赤旗中断となったことで、アタックシミュレーションの途中だった山下選手はそのチャンスを失ってしまい、タイムを伸ばせず。一方、フェネストラズ選手はこのセッションで使えるタイヤが限られていたこともあり、終盤のアタックシミュレーションはしなかったが、ともに予選に向けての手応えを得る形でセッションを終えることになった。

迎えた午後の予選。体感的にも暑さを覚える中、午後2時にセッションがスタート。ところが、コース上に動物が現れるというまさかの事態に、赤旗が提示される。10分後に無事再開し、KONDO RACINGでは、まずA組に山下選手が出走した。アウトラップを終えて、一旦ピットイン。タイヤを交換し、タイミングを見て再びコースへと向かい、計測2周目にアタックすると1分05秒433をマークして4番手を獲得する。続くQ1・B組で出走したフェネストラズ選手も同じアプローチでアタック。1分05秒057のタイムで5番手となり、今回も2台揃ってQ2へ駒を進めることに成功した。

午後2時40分、Q2を開始。コース全長が他のサーキットよりも短いSUGOでは、コース上のライバルを意識しながらのアタックがより重要となる。チームでは、Q1と同じ方法でアタックする事を決め、まず両者をアウトラップに送り出した。その後、ピットでニュータイヤを装着してアタックを開始。ライバルとの位置関係をうまく保ちながらアタックラップへと向かった。その中でフェネストラズ選手は1分04秒706の好タイムを出して2番手を獲得。また、山下選手も1分04秒933をマーク、7番手となった。

SUGO の一戦はタイトなコースでの決勝となるだけに、時に荒れる展開も少なくない。その一方で、KONDO RACINGとしては2台揃って好成績を残したいところ。ミスのない走りとピットワークはもちろんのこと、着実なアプローチで力強い戦いを披露したいと意気込む。

公式予選記録

Pos. No. TEAM DRIVER Q1 Q2
1 1 TEAM MUGEN 野尻智紀 1’04.349 1’05.015
2 4 KONDO RACING サッシャ・フェネストラズ 1’04.706 1’05.057
3 6 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 大津弘樹 1’04.785 1’05.193
7 3 KONDO RACING 山下健太 1’04.933 1’05.433

参加台数:21台 出走台数:21台

近藤監督のコメント

近藤監督 PHOTO

今回の予選は、2台揃ってQ2に行けたということが大きいです。Q2に進出した12台のうち、トヨタエンジンユーザーがウチの2台を含めて4台しかいなかったので、その点でも(ホンダ勢に)ちょっと負けたのかなという感じです。ただ、データを見る限りはそんなに大きな差はなかったので、ほんの僅かの差が順位になって出てしまうし、コンマ1秒で2、3台分のグリッドが変わりますから。結果としては、サッシャ(フェネストラズ)ががんばって今シーズンのベストリザルトになりました。一方で、(山下)健太が相当悔しがっていました。全体的にどこが悪いのか聞いたら、致命的なところもないと。なんとなく全体位的に足らなかったようです。チーム全体としての流れは悪くないですし、その流れのまま予選が出来たので、問題は明日の決勝になります。決勝に強いドライバーがグリッドの後方に多くいるので、前に出してはいけないし。サッシャはスタートでチャンスを逃さず、ポールポジションの野尻(智紀)選手を捕まえてほしい。あとはスタッフのピット作業です。今日の走行中もちょっとしたミスがあったので、再度確認してもらい、がんばってもらいたいところです。僕の仕事として、ドライバーとスタッフのマインドを上げるように努めます。SUGOはよく”魔物が棲む”と言うので、明日はその魔物をチームの味方にしたいです。

3号車・山下健太選手のコメント

山下健太 PHOTO

クルマのセットアップはそれほど悪くなかったのですが、Q2で上位に行くには、全体的に少しずつが足りない感じでした。朝のフリー走行で走ったときに「これはいける!」というほどの手応えではなかったものの、好感触を得ていました。セッション終盤にニュータイヤで確認する予定が、赤旗中断になってその作業ができなかったのが残念でした。ただ、予選では行けるだろうという感触もありました。それが予選になって、タイムが今ひとつ伸びず。Q1からQ2に向けてリアの足回りの微調整をしましたが、基本的にはQ1とほぼ同じです。フィーリングとしては路面のグリップ向上でよく感じましたが、一方でトップからはタイム的に離されてしまいました。明日はスタートを決めて、ピット作業もしっかりやってもらい、あとは戦略を味方にポジションを上げたいと思います。

4号車・サッシャ・フェネストラズ選手のコメント

サッシャ・フェネストラズ PHOTO

これほどいい結果になるとは思わなかったので、うれしかったですね。去年のSUGO戦は来日が叶わず、また一昨年はスタート直後の1コーナーで他車との接触があってレースをしていないんです。それだけに、いい結果を得られてハッピーです。またチームもしっかりと予選に向けて準備してくれました。明日のレースでもしっかり集中して戦いたいと思います。SUGO は1周が短いコースなので、周回数が多いレースになります。また降雨予報が出ていますので、まずはいいスタートを切ってしっかりとポイントを獲る戦いをしたいです。もちろん、初優勝目指してがんばります。

3号車・阿部エンジニアのコメント

朝のフリー走行では、アタックシミュレーションのタイミングで赤旗が出たので、確認ができずじまいでした。セクタータイムは良かったですし、予選に向けて準備したものも良かったようです。持ち込みはさほど悪くはなかったです。予選に向けてもほぼ微調整で挑むことができました。今回は、0.1秒の差でも順位が大きく変わるような展開だったのですが、やはりホンダエンジンユーザーと比べると、セクター3、4で伸びなかったですね。それを踏まえるとそれなりの順位だったと思います。決勝ではスタートを決めて、ピット作業をうまく済ませることでいい結果を残せるとは思いますが、まずは決勝前の朝のフリー走行でしっかりとロングランのチェックを行いたいと思います。

4号車・村田エンジニアのコメント

朝のフリー走行では、ユーズドタイヤしかないためにあまり確認ができない状態でした。ただ、赤旗が出るまでにアタックシミュレーションも済ませていたので、問題なくできたと思います。予選に向けて、クルマの調整を行い、アタックとしてはユーズドタイヤでコースインし、ピットに戻ってからニュータイヤへ交換。そのあとは他車とタイミングを見計らってコースに向かうようにしましたが、計測2周目でアタックすることは決めていたものの、他車の中には計測3周目もいたのでそのタイミングがちょっと難しい感じでした。その中で、いい形でアタックできたと思います。決勝では、タイヤをたれさせないようにということを心がけるレースをしてもらい、いい走りをしてもらえたらと思います。




二日目 決勝(6月19日・雲り/ドライ)

決勝レポート

フェネストラズ選手、初優勝を達成!

朝から青空が広がったスポーツランドSUGO。全日本スーパーフォーミュラ選手権のシーズン前半戦を締めくくる一戦は、予選日同様、蒸し暑い中で開催された。決勝は、予選2位の4号車サッシャ・フェネストラズ選手がスタート直後にトップを奪取すると、荒れた展開を冷静に戦い抜いてトップチェッカー!自身スーパーフォーミュラにおける初優勝を果たした。一方、7番手スタートの3号車山下健太選手はオープニングラップの2コーナーで他車と接触。コースオフを喫し、リタイヤに終わる結果となった。

決勝日の朝から青空が広がったSUGO。午前10時10分から始まった30分間のフリー走行は気温28度、路面温度は47度というタフなコンディション下で行われた。その中で各車は決勝に向けてロングランを行い、セッティングやタイヤ内圧の調整に勤しんだ。チームでは、フェネストラズ選手がセッション序盤に自己ベストタイムとなる1分08秒211をマークして8番手につけると、その後も安定したタイムを刻み続けた。また、山下選手も1分08秒320の自己ベストタイムを刻み、両者とも決勝に向けて手応えある走りを見せていた。

決勝は午後2時30分にスタート。1周がおよそ3.6kmと他のサーキットよりも短いSUGOでは、53周の戦いとなる。梅雨入りしたばかりの東北地方ながら、今日は気温も高くついに30度を記録。路面温度はウォームアップ走行が終了し、レース直前のグリッドへの試走時点で降った通り雨の影響を受けたのか43度まで下がったものの、真夏日の中でハードな戦いになると予想された。

一瞬の降雨で不安がよぎることになったが、幸いにしてすぐにドライコンディションへと復活。午後2時半から何事もなかったかのようにフォーメーションラップが始まった。シグナルオールレッドからブラックアウトし各車がスタートを切ったが、その中で抜群のスタートを見せたのがフェネストラズ選手。隣にいるポールポジションスタートの1号車野尻選手を抑え込み、1コーナーへのホールショットを奪った。一方、7番手スタートの山下選手はやや出遅れ、1コーナー進入までに2つポジションを落としてしまう。さらに激しいポジション取りの末に山下選手の右リアタイヤと後方車両のフロントウィングが接触し、その勢いでスピン。2コーナーのイン側でストップした山下選手は再スタートを何度も試みるが、スタート直前の降雨で芝生が濡れて滑り脱出できず。クルマの水温が上昇したため、断腸の思いでコース復帰を断念。なんとも悔しい結果となった。レースはこのアクシデントによって、セーフティカーがコースイン。山下選手の車両回収が完了し、7周終わりでレース再開を迎えると、フェネストラズ選手は完璧なタイミングでリスタートを決めた。2番手との差を確保して1コーナーへと向かったものの、後方では1台の車両が1コーナーでコースアウト。激しいクラッシュとなり、またもセーフティカーが導入された。フェネストラズ選手のリスタートが水泡に帰す一方、車両回収の時間がかかり、セーフティカーランのままピット作業が可能となる10周目を迎える。

チームでは、10周終了のタイミングでピットインを実施。ミスなく迅速にタイヤ交換を済ませてフェネストラズ選手をコースへと送り出した。同一周回でピットインした中でトップのままコースに戻ったフェネストラズ選手は、15周終わりでレースが再開すると、今度も見事なリスタートを決めて8番手から周回を重ねていく。その後はステイアウトした前方7台の動向を気にかけつつ、自身はタイヤマネージメントに注力。前方車両に迫るスピードは存分にあるものの、タイヤを労わるために敢えてギャップを作って走行するなど、タイヤだけでなく、レースをもコントロールするクレバーな走りを披露した。

ステイアウトした前の7台がピットインを伸ばす中、レース序盤のセーフティカーランが長引いたこともあり、レースは予定周回の53周ではなく、70分間の時間レースになる可能性が高くなる。すると、上位7台が1台、また1台とピットイン。46周終わりで最後の2台がピットに戻り、この時点でようやく名実ともにフェネストラズ選手がトップに立った。その後、48周走行時に残り時間1分を切ると、レースは49周をもって終了。フェネストラズ選手は2位に5秒強の差をつけてトップチェッカー! KONDO RACINGでスーパーフォーミュラのデビューを飾って以来、3年越しとなる念願の初優勝を果たすこととなった。

シーズン前半を締めくくる一戦を2019年第6戦岡山以来の優勝で終えたKONDO RACING。安定して予選での速さを披露できるようになった今、次なる目標は山下、フェネストラズ両選手による表彰台獲得であることは言うまでもない。次なる戦いは7月16、17日に開催される富士スピードウェイでの一戦。さらなる進化を目指し、勇往邁進あるのみだ。

決勝結果

Pos. No. TEAM DRIVER TIME/DIFF LAPS Best Time
1 4 KONDO RACING サッシャ・フェネストラズ 1h10’32.529 49 1’09.076
2 65 TCS NAKAJIMA RACING 大湯都史樹 5.304 49 1’09.108
3 1 TEAM MUGEN 野尻智紀 7.021 49 1’09.214
3 KONDO RACING 山下健太 0

参加台数:21台 完走台数:19台

FASTEST LAP

No. TEAM LAPTIME
19 Yuhi Sekiguchi / carenex TEAM IMPUL 1’07.125 44

近藤監督のコメント

近藤監督 PHOTO

スタート直前にパラパラと雨が降ってきたので、また今日も運がないのかと思いました。そうしたらあっという間に雨が止んで。サッシャ(フェネストラズ)も「このコンディションは悪くない」と言うので、あぁ今日は自信があるんだなと思いました。今朝のフリー走行の様子では、(山下)健太の方が良かったくらいなので、決勝のあの結果は本当に悔しい。彼は予選での速さがレースに繋がっていない状態が続いているので、今日はうまく行っていればいい戦いができる可能性もあっただけに残念でした。とにかくこの先はいいスタートを決めてもらえたらと思います。いつ勝っても不思議じゃないドライバーなので、「次の富士はお前が勝つんだ」と言いました。優勝は2019年岡山以来なので、今日の優勝まで長かったです。チームとしてはシーズンオフから調子が良かったものの、何かが足りないという状態で。今日のような日が必ず来るとは思っていたのですが、なんといっても今日はサッシャのスタートに尽きるでしょう。チームも全体的にがんばってくれました。ピット作業の心配もありませんでした。スタッフには、セーフティカー中のタイヤ交換だから、リラックスして作業してくれと伝えました。一方、終盤までステイアウトしたクルマが7台がいる中、サッシャはレースに集中するために無線の交信をせずに走行したいとのことだったので、あとはもう彼に任せました。タイヤもうまくマネージメントしてよくがんばったと思います。

チームとして、ドライバー同士がライバルとして切磋琢磨して今後も伸びていってほしいと思います。次の富士での戦いも期待していてください。

3号車・山下健太選手のコメント

山下健太 PHOTO

今回は決勝に向けていいセットが見つかり、感触もあったので決勝でしっかりと走りたかったという思いが募りました。スタートしてすぐに終わってしまったのは最悪だなという思いです。スタートはストール気味になって自分のミスが全てです。スタートで2台に先行されコースアウトした時に「戻れたらコースに復帰しよう」と思ったんですが、芝生が濡れていてタイヤが空転しそうこうするうちに水温が上がったので諦めました。あのままレースができていればと言う思いがあったので悔しい気持ちです。

富士ではいい結果が残せるよう、またがんばります。

4号車・サッシャ・フェネストラズ選手のコメント

サッシャ・フェネストラズ PHOTO

今回優勝できてとてもうれしいです。最高です。去年はなかなか日本に入国できず、2020年はここSUGOでスタート直後にリタイヤしたので、今日は結果を残すことができてうれしいです。昨シーズンはチームとしてなかなか思うようにレースができず、タフなシーズンを過ごしました。ようやく今年はトップ争いするところに戻ってきました。今日のレースはいいスタートを切ることができました。その中でタイヤマネージメントが大事になると思って労わるように走りました。一方で、ステイアウトした7台が長い間前を走ったので、どういう展開になるかわからず、また前にいたクルマとはあえてギャップを作ることで、クリーンエアの中で走るようにしました。プレッシャーはなかったですが、前のクルマにはできるだけ早くピットに戻ってほしいと思っていました。でも残り少なくなっても前がピットに入らないので気になってしまい、チームには無線で話しかけないようにお願いしたんです。それだけレースに集中したいと思いました。とにかく自分のベストレースをしようと心がけました。

表彰台でフランス国歌を聞いたときは本当にうれしかったです。F3以来だったので、久しぶりでした。レースウィークを迎えた頃には、正直、今回は優勝できると思っていなかったので、この勝利は何ものにも代え難い喜びになりました。

3号車・阿部エンジニアのコメント

戦わずして終わったので残念です。スタートのミスで出遅れてしまい、山下選手の後方で詰まってしまった形になって。1コーナーで場所取りでぐちゃぐちゃとした感じになってしまいました。朝のフリー走行からスタート前チェックでしっかりと手応えがあるとのことだったのですが。ただ、予選位置が7番手の場合、ちょうど真ん中になる分、SUGOは厳しいだろうと言ってたら本当にそういうことになってしまいました。結果がどうであれ、今回はコースで走りたかった気持ちです。(スピン後)コースに戻ろうとしたんですが、すぐに戻れず、水温が上昇してしまったのでエンジンを止めるしかなくて。残念でした。次戦はまずは予選でさらに上に行くこと、スタートを決めることです。

4号車・村田エンジニアのコメント

スタートをしっかり決めてくれたのが一番ですね。朝のフリー走行では普通に決勝セットにして、データ取りをしました。タイヤの内圧やクルマの挙動を確認する中、装着していたタイヤが古いものだったのでタイムは伸びませんでしたが、手応えはありました。レース中は序盤のセーフティカーランが長かったし、タイヤ交換後はステイアウトした車両に”フタ”をされた状態で走ることになったので、自分のペースでは走れなかったですね。でもしっかりとタイヤをセーブしながら周回していたと思います。ステイアウトから逆転するには36秒ほどマージンがなければ逆転できないので、その辺りはさほど気にしていませんでした。チームとしてはセオリー通りのレースをしましたが、ステイアウトした車両が後半フレッシュタイヤで追い上げてくることも考慮し、タイヤを温存する走りもできていました。今後はガチバトルで優勝するようなレースを見せてもらえたらと思います。

PHOTOギャラリー

Loading...