RACE REPORT
SUPER FORMULA
第6戦 富士スピードウェイ
一日目 予選(7月16日・雨/ウェット)
予選レポート
シーズン後半戦の初戦、雨に翻弄される予選に
シリーズ後半戦へと突入した今シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権。第 6 戦はシーズン 2 度目の開催となる静岡・富士スピードウェイがその舞台となる。大会初日は雨模様の不安定な天候に見舞われその状況を思うように味方につけることができず、予選で上位につけることは叶わなかった。早朝の富士スピードウェイは鉛のような灰色の雲が辺り一面を覆った状態。午前 10 時 15 分から始まったフリー走行ではまだ雨こそ落ちてはいなかったが、路面はダンプコンディションの状態でウェット宣言が出ていた。また気温は 22 度、路面温度は 25 度と夏の季節とは大きく外れたコンディションでのスタートとなった。状況を確かめるべく各車がレインタイヤを装着してコースへと向かい、一時は路面の一部が渇き始め、回復傾向にあった。ところが、走行開始から 30 分もすると再び天候が悪化。瞬く間に土砂降りの雨となり、ほとんどの車両が走行を見送った。
その後も激しい降雨が続いたため、午前 11 時 10 分にセッションは赤旗中断となり、全車がピットで待機を強いられることに。次第に小康状態となったため、再開に向けて準備を進めていたが、午前 11 時 35 分には天候改善の見込みがないことから、競技団によってセッション終了が決定。ドライバーにとっては予定していたメニューをほとんど消化することなく、走行の機会を逃す事態となった。なおチームでは、3 号車の山下健太選手は 1 分 35 秒 078 で 11 番手、4 号車のサッシャ・フェネストラズ選手は 1 分 34 秒 905 で 8 番手の結果を得ている。
午後に入ると天候はさらに悪化。雨に加えて雲が下りるような感じとなり、視界も靄がかかったような状況に。これを受けて予選方式が変更され、従来のノックアウト方式から 30 分間のタイムトライアル方式による予選が実施されることになった。
午後 3 時 10 分、降り続く雨の中、タイムトライアルによる予選がスタート。気温 22 度、路面温度 24 度と、午前のセッションとほぼ変わりないコンディションだが、コース上の車両からは高い水煙が上がるほど本降りの状態。少しでも雨量が少ない中でアタックを行おうと、各車がタイミングを伺いながらアタック合戦の幕が上がった。だが開始から 7 分の時点で 1 台の車両がコースアウト。この車両回収のためにセッションが赤旗となり中断する。およそ 10 分後にリスタートすると、改めて新しいレインタイヤを装着した各車がコースへ。KONDO RACING の 2 台は、タイムアップするタイミングを伺いつつ周回を重ねたが、思うようにタイムを伸ばせず。残り 10 分強の時点でピットインし、最後のアタックに向けて調整を行った。大半の車両がコースへと戻る中、山下、フェネストラズ両選手も改めてアタックへと挑む。そんな中、残り 7 分を切った時点でセッションは 2 度目の赤旗中断を迎える。13 コーナーの立ち上がりで車両トラブルを起こしてストップした車両の回収が終わると、午後 3 時 49 分には残り 6 分 37 秒のアタックが再開。待機中は雨も弱くなり、視界も改善したかに思われたが、エンジンがかかって各車がコースに向かうと再び待ち構えたかのように雨が落ち始め、改めて難しいコンディションへと変貌してしまう。さらに残り時間まで 2 分を切る頃には 1 台の車両がオーバーラン。この後、コントロールタワーから赤旗が提示され、セッションはこのタイミングで終了を迎えた。
結果、KONDO RACING の 2 台は予選アタックのタイミングを掴みきれないままセッションを終える形となり、フェネストラズ選手が 1 分 37 秒 809 で 7 番手に。また、山下選手は 12 番手に該当する 1 分 38 秒 105 の自己タイムをマークしていたが、このタイムが黄旗区間走行時のものであったため、セカンドベストタイムに該当する 1 分 39 秒 441 が採用され、15 番手グリッドからスタートを迎えることとなった。決勝日は天候回復の見込みで、予選日とは大きく異なるコンディションでの戦いになる模様。状況をリセットし、決勝での躍進に期待が集まる。
公式予選記録
Pos. | No. | TEAM | DRIVER | Lap | Delay |
---|---|---|---|---|---|
1 | 19 | carenex TEAM IMPUL | 関口雄飛 | 2 / 9 | |
2 | 38 | P.MU/CERUMO・INGING | 坪井翔 | 2 / 12 | 0.907 |
3 | 1 | TEAM MUGEN | 野尻智紀 | 3 / 14 | 1.289 |
7 | 4 | KONDO RACING | サッシャ・フェネストラズ | 3 / 14 | 1.858 |
15 | 3 | KONDO RACING | 山下健太 | 2 / 14 | 3.490 |
参加台数:21台 出走台数:21台
近藤監督のコメント
雨に翻弄された予選となりました。チームのピット位置がピットロード出口に近い方が有利なので厳しい状況でした。セッティングに関しては、2 台ともさほど悪くはなかったと聞きました。総体的には雨が強く降り始めるタイミングと、コースイン後のアタックラップ 2 周目でもう少し頑張ってプッシュしてくれたら良かったのかなと思います。もう少し上の順位も狙えたのではないでしょうか。今のチーム状況から言えることは、晴れの中、イコールコンディションでアタックをして、レースをさせてもらった方が強さを発揮できる状態なので、明日の決勝は是非とも晴れてほしい。富士のコースは他のサーキットと違って抜けるポイントも多いので、クルマが決まっていればまた勝負できると確信している。今回はどのチームもドライコンディションでの走行をしていないので、決勝当日のフリー走行での出来次第で勝負が決まるので、選手二人には表彰台、そして入賞を意識してレースしてもらえたらと思います。
3号車・山下健太選手のコメント
朝のフリー走行では、走り始めからあまり良くなくて。それでも 10 番手前後にはいました。それをもう少し良くしようとしたんですが、さほどうまく行きませんでした。予選に関しては、ベストラップをマークした周に黄旗区間があったのでそのタイムが抹消されることになりました。12 番手だったのですが、15 番手になったので残念です。ただ、明日は天気がまた違う感じになるのでそこで切り替えていい戦いができればと思います。
3号車・阿部エンジニアのコメント
どれだけツキがないんだろうと思った予選になりました。確かにコンディション的に難しい状況だったのですが、最初のアタック中でマークしたベストタイムが、黄旗が出ていた周のものだったので、抹消されることになってしまいました。ちょうどアタックラップ中にスピンして止まったクルマがいたので、仕方ないですね。雨が強くなることは想定していたので、最初のアタックでタイムが出なければその後はきついかなと思っていました。明日はドライコンディションでレースができるので、また頑張ります。
4号車・村田エンジニアのコメント
朝のセッションでは、ダンプコンディションの状態でクルマのバランスも良かったので、そのあと雨が強くなってきたことに合わせてヘビーウェットでのクルマの状態を確かめたかったのですが、赤旗などもあって確認がきちんと取れませんでした。そういう流れで予選を迎えることになりましたが、アタックらしいことができたのは最初の赤旗が出るまでで、それ以降は雨も強くなってまた赤旗になったりと、結局タイミングが合わず、チャンスが巡ってきませんでした。明日は天気が回復するということなので、朝のフリー走行で見直すことになりますが、ドライコンディションは悪くないと思います。
二日目 決勝(7月17日・雨/ウェット)
決勝レポート
山下選手、第2戦以来となる入賞を果たす
前日の雨から天候が回復した静岡・富士スピードウェイ。午後にはさらに天気が良くなり、ドライコンディション下での決勝レースが開催された。KONDO RACING では、4 号車サッシャ・フェネストラズ選手が予選 7 番手からスタートを切るも、後続車からの追突で戦線離脱。悔しい結果となった。一方、15 番手からスタートした 3 号車山下健太選手は安定感ある速さを武器にポジションアップを果たし、7 位でチェッカー。第 2 戦富士以来となる入賞を遂げている。
決勝日の朝、サーキット上空にはまだ鉛色の雲が残り、路面の一部はまだダンプコンディションという状態だった。午前 9 時からのフリー走行においては、山下、フェネストラズ両選手もまずレインタイヤでコースイン。路面状況をチェックしてからスリックタイヤへとスイッチしてセットアップを進める予定をしていた。セッション終盤、セクタータイムで自己ベストをマークする走りを見せていた山下選手だったが、残り時間 2 分のところでまさかのスローダウン。ダンロップコーナーのエスケープゾーンにクルマを止めるハプニングとなる。幸い、部品交換を行う作業で済むトラブルだったため、決勝に向けての心配は払拭された。一方のフェネストラズ選手もドライコンディションのセットアップ作業を進めたが、思うような手応えを得られず 9 番手に。決勝直前のウォームアップ走行で最終確認できるよう、再度セットアップを見直すことになった。
午後に入ると、天気はすっかり夏の天気となりやや汗ばむ陽気に。気温 27 度、路面温度 37 度とレースウィークを通して一番高い数値を刻む中、午後 2 時 30 分のフォーメーションラップを経て各車がグリッドに整列したが、その中で 1 台が最終コーナーでバランスを崩してコースサイドのグリーンに飛び出し、車両を止めてしまう。これにより、エキストラフォーメーション 1 周が行われ、本来 41 周でのレースは 1 周減算されて 40 周での戦いへと変わった。20 台によるスタートでは、フェネストラズ選手は 7 番手のポジションをキープ。一方の山下選手は接触等で混乱した渋滞をうまくかわし、ポジションを 2 つ上げて 13 位でオープニングラップを終了した。しかし、3 周目に入ると、フェネストラズ選手は後方の No.64 山本尚貴選手との激しいポジション争いとなり、1コーナーから 2 コーナーにかけて 2 台がドッグファイトを展開。だがそこでラインが交錯する形となり、山本選手のフロントノーズがフェネストラズ選手のリアボディに接触。そして、この勢いでフェネストラズ選手のクルマがスピンを喫してコースアウト側のガードレールに衝突。フロント、そしてエンジンから後方のボディパーツが粉砕するほどの激しいクラッシュを引き起こしてしまった。また、この事態を受けてレースにはセーフティカーが導入された。なお、フェネストラズ選手はクラッシュ後に自力で下車。その後、病院での検査を行うも、大事に至らず済んだのは幸いだった。
その後、9 周終了時をもってレースが再開。山下選手は 10 番手から追い上げを開始したが、11 周終わりでピットイン。タイヤ交換のルーティンワークを速やかに済ませてコースへと復帰した。その後も、ライバルたちによるルーティンのピットイン、さらにはコース上のアクシデントに関係したドライブスルーペナルティなどがあり、山下選手はピットインを済ませた車両の中でしっかりとポジションアップに成功。その中でも 18 周目には、サイド・バイ・サイドの末に前方の 1 台を逆転。”裏の順位”、つまりピット作業を終えた車両の中で 4 番手へ浮上し、21周目にはさらにもう 1 台を 2 コーナー先でパスする活躍。後半に向けて更なるポジションアップに期待がかかった。
25 周終わりでピット作業を終えた先頭車両がコースに復帰。ところがアウトラップのダンロップコーナーで左リアタイヤが脱落し、スピンを喫することに。これを受け、レースは 2 回目のセーフティカー導入のボードが提示された。なお、これとほぼ同じタイミングでピットインした車両が 1 台いたが、コース上にはまだセーフティカーが導入されていないにも関わらずコース復帰後は減速した形で走行を開始。しかも復帰したのがピットインを済ませていたクルマの先頭の前であったことから、山下選手もその遅い走行ペースの影響をまともに受けてしまう。その結果、実際にセーフティカーが導入されたタイミングでピットインした 3 台が期せずして上位復帰したことで、山下選手は逆にポジションアップの機会を喪失。6 番手でセーフティカーランを続けることになった。レースは 30 周終了をもってリスタート。チェッカーまで残り 10 周、懸命の走りを見せたが、最後の最後にタイヤ交換を行った車両の猛追に遭い、37 周目に入ったメインストレート上で先行を許してしまい、7 番手チェッカーという結果でレースを終えている。
フェネストラズ選手のクラッシュ、山下選手の不運と、チームにとってはアクシデントとハプニングに翻弄される決勝になってしまった富士大会。悔しさばかりが先行する結果だったが、その一方で、徐々に予選での速さや決勝での強さを披露できる形が見えつつあるのも事実。次大会のもてぎは、開幕大会以来の 2 レース開催となるため、是が非でも勢いを味方にして、2 台揃って優れたパフォーマンスを披露したい。
決勝結果
Pos. | No. | TEAM | DRIVER | TIME/DIFF | LAPS | Best Time |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 15 | KONDO RACING | 笹原右京 | 1:10’52.708 | 31 | 1’24.011 |
2 | 38 | P.MU/CERUMO・INGING | 坪井翔 | 2.098 | 32 | 1’24.477 |
3 | 1 | TEAM MUGEN | 野尻智紀 | 7.549 | 14 | 1’24.495 |
7 | 3 | KONDO RACING | 山下健太 | 15.660 | 14 | 1’24.958 |
参加台数:21台 完走台数:15台
近藤監督のコメント
まずは、クラッシュに遭ったサッシャ(フェネストラズ)の身体が大事に至らなくて良かった。まさかの出来事でした。コメントしようがないです。一方で、(山下)健太もよく粘っていいレースを見せてくれていたのに、コースに復帰した車両がペースを落として走ってしまったので、ポジションアップのチャンスを失うというまさかの展開でした。もう二つ三つはポジションアップできたと思うだけに悔しいですね。クルマの仕上がりは良かったと健太は言っていたので、今後に向けてはひと安心ですね。次のもてぎでは、2 台揃っていいレースができるようにがんばります。ここ最近、一番の収穫があったレースでした。
3号車・山下健太選手のコメント
結果としては残念ですが、クルマ的には今までの中でも結構いいペースで走ることができたのは良かったと思います。決勝直前の走行ではタイヤのウォームアップに時間を使ったので、セットアップの確認はできなかったが、おおよそのバランスはわかったので心配はありませんでした。スタートはうまくいかなかったのですが、他車のアクシデントなどもあってポジションを上げることができたし、ピットインのタイミングもうまく行ったと思います。今回の戦略としては、前にたくさんクルマがいたので、そのクルマとは異なる戦略を採る必要がありました。もしミニマムで多くのクルマがピットに入るのであれば、ステイ(コースで周回を続ける)で、と考えていたのですが、ミニマムで入ったのが思いのほか少なかったので、次の周が狙い目だと思ってピットに戻りました。上位入賞も見えていたのですが、2 度目のセーフティカー導入では、セーフティカーに先導されるまで飛ばさなきゃ(スピードアップしなければ)、と思っていたのですが、コース復帰したクルマが何を考えていたのかスピードを落として走っていて……。それで結果的に 3 つほどポジションを落とすことになりました。どうしようもなくて残念です。今回、手応えあるクルマだったし、セットアップも狙った方向に行ったので、次のもてぎでは比較的結果が出ているコースなので、勝てればと思います。
3号車・阿部エンジニアのコメント
まさかの展開でした。普通にレースができていれば、5 位入賞は間違いなかったと思います。最後にタイヤが元気なクルマにも抜かれましたしね。朝のフリー走行ではクルマが急に止まりましたが、あれはギアシフトが動かなくなったためです。部品を交換することで対処できるものだったので、決勝前にそのトラブルが出ずに良かったです。今回のクルマの状態も良かったようで、(山下)健太からも”今季ベストのもの”と言ってもらえましたし、ペース自体も悪いものではありませんでした。あの予選順位から入賞してポイントが獲れたのは良かったです。
4号車・村田エンジニアのコメント
大変なことになってしまいました。朝のフリー走行では、あまり良くなかったので、決勝前の 8 分間でセットを見直して確認したかったんですが、その結果を確かめる前にレースが終わってしまいましたからね。ドライコンディションの富士をしっかりと走り、データを取りたかったですね。サッシャは病院の検査を受けて大事なかったと聞いたので、良かったです。クルマは全損になると思うので、次のもてぎに向けて作業が必要になりますが、また一からがんばります。