RACE REPORT

SUPER FORMULA

第5戦 モビリティリゾートもてぎ

第5戦(8月24日・曇り/ドライ)

予選レポート

山下健太選手が自身2度目のポールポジションを獲得

7大会9レースで行われる今年の全日本スーパーフォーミュラ選手権も、今回の第5戦でシーズン折り返しを迎えた。舞台となるモビリティリゾートもてぎは毎年8月の開催で、夏休みの家族連れが多く観戦に駆けつける1戦だ。週末の天気は、設営日の8月23日(金)は朝から蒸し暑い陽気だったが午後に大粒の雨が落ちてくるなど不安定な様子で、予選日の24日(土)、決勝日の25日(日)も予報には傘マークが並んでいた。結果的に予選日はサポートレース含めすべての走行セッションが終わるまでは何とか空模様は持ちこたえ、ドライコンディションの中で最速を決める戦いが繰り広げられた。

午前中のフリー走行で、山下健太選手がトップタイムを奪取。セッションの中盤で1分33秒台前半のタイムを記録して暫定トップに浮上すると、残り5分間のアタックシミュレーションでは1分32秒366まで自己ベストタイムを削り、再びタイミングモニターのトップに立った。小高一斗選手は、1分33秒340で17位。最後のアタックシミュレーションでは走りをまとめることができずタイム更新はならなかったが、車両セットアップの手応えは掴んでいた。ただ、1秒以内に17台がひしめき合うようなリザルトの中、Q2に進むためにはさらに進化が必要。午後の予選に向けて、さらにセッティングを煮詰めていった。

午後から降雨の予報で心配されていた天気は意外にも当たらず、上空からはじりじりと暑い日差しが照り付けた。周囲をオーバルコースで取り囲まれているモビリティリゾートもてぎはまるで盆地のような気候で、熱も湿気も逃げにくい。気温35度、路面温度46度というコンディションで、公式予選がスタートした。Q1のA組に登場したのは山下選手。セッション開始と同時にピットを離れると、コースコンディションと車両チェックのために1周走行しピットイン。タイヤを履き替え、残り時間が5分をきったところで再びコースに戻る。11台が出走する中、最後尾でのコースイン。レースでは走れば走るほど路面にラバーが乗りコースコンディションは向上していくことを考えると、最後にアタックできるベストな位置取りでチームは山下選手を送り出すことができた。各車がウォームアップラップを挟んで、残り時間が1分に差し掛かったところで続々とアタックに入っていく。山下選手は目論見通り、残り時間が10秒のところでコントロールラインを通過しアタックスタート。4つのセクターで自己ベストタイムを並べ、1分32秒543の2位でQ1突破を果たした。

続くQ1のB組には小高選手が出走。こちらも全車が一旦コースに入り、車両のチェックを行うとピットに戻ってタイヤを履き替えアタックへ、という流れで進んでいく。チームはこのセッションでも小高選手を最後に送り出し、万全の状態でドライバーの走りを見守る。思惑通り、残り30秒ほどのところでコントロールラインをくぐり最後尾からアタックに入った小高選手は、フリー走行での自己ベストを約0.4秒更新する1分32秒897をマーク。6番手に滑り込み、無事にQ1突破。2台そろってQ2に駒を進めることになった。

注目のQ2は、1台がチェックランに向かっただけで、KONDO RACINGの2台を含め11台はアタックのタイミングまでピットに待機。その11台の中ではやはり後方となる9番目、10番目にピットを離れ、コースへと入っていった。1台のみ、ウォームアップラップを削るためにピットに待機していた車両もあったが、残り3分でコースイン。タイミングとしてはこの車両が先頭でアタックに入っていくことになり、KONDO RACINGはQ2でもベストな位置取りで2台をコースに送り出せたことになる。かくして、次々とライバルたちがアタックを開始。山下選手が残り30秒、小高選手が残り20秒でコントロールラインを切ってアタックに入ると、各セクターで自己ベストタイムを更新していく。ただ、セクターベストを表すレッドマークは2台ともに表示されず。それぞれベストアタックができていることは確信し、モニターのどのポジションに名前が浮上するのか、チームが固唾をのんで見守るなか、先にフィニッシュラインに戻ってきたのは山下選手で、1分31秒995をマークしてトップのポジションに躍り出た。それまで暫定1位にいた選手のタイムを0.079秒上回り、一人だけ1分31秒台のタイムに入れてきた山下選手。堂々のポールポジション獲得となった。山下選手にとってこれが自身2度目のポールポジション。記念すべき初ポールは、我がKONDO RACINGからSUPER FORMULAデビューを飾った2017年に、このもてぎで行われた第4戦で獲得。そこから7年、何度も悔しさを味わってきたなかで、ようやく2度目の「最速の証」を手に入れることに成功した。

最後にアタックを終えた小高選手は1分32秒248で7位。惜しくもトップ6には届かなかったが、6位とは0.01秒差、5位とは0.075秒差と、瞬きよりも僅差での戦いの中、ベストを尽くして4列目のスターティンググリッドを手に入れることになった。

予選結果

Pos. No. TEAM DRIVER Q1 Q2
1 3 KONDO RACING 山下健太 1’32.543 1’31.995
2 6 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 太田格之進 1’32.270 1’32.074
3 39 VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING 大湯都史樹 1’32.616 1’32.091
7 4 KONDO RACING 小高 一斗 1’32.897 1’32.248

参加台数:21台 出走台数:21台 完走台数:21台

近藤監督のコメント

近藤監督 PHOTO

やりました。健太は朝から速かったので期待はしていたものの、SUPER FORMULAは少しでも何かがあると朝トップタイムを出したドライバーでも予選で10位以下だったり、あるいはQ1敗退みたいなこともありうるので、そういう意味ではドキドキしていました。セクタータイムをずっと見ていたけど、健太は1つもセクターベストを取っていなかった。だから良くて3位ぐらいかなと思っていたのですが、戻ってきてみたらトップ。クルマも決まっていたということだと思います。いい仕事をしてくれました。小高に関しても、7番手といいポジションに来られたので、チームとしてはいい土曜日になりましたね。彼にとっても自信につながる予選になったと思います。2台とも、クルマの決まり方は今年一番じゃないかなと感じるぐらいに調子がいいので、明日は2人ともに上位フィニッシュを目指します。

3号車 山下健太選手のコメント

山下健太 PHOTO

これまでテストなどでトップタイムを記録することはありましたが、そこで何かをつかめたと感じても予選本番では裏切られるという展開が続いていたので、今回のポールポジションは本当にうれしいです。デビューイヤーで初ポールを獲れたので、そこからここまでの7年間はものすごく長く感じました。走りはじめから手ごたえはあったものの、Q1では少し伸び悩んだところがあったので、その時点ではポールポジションを獲れる確信はありませんでしたが、Q2に向けたアジャストがとても良かったです。これまでのレース人生の中で一番嬉しい日になりました。この流れのまま、決勝レースも戦っていきたいです。

4号車 小高一斗選手のコメント

小高 一斗 PHOTO

フリー走行で山下選手がトップタイムでいてくれたので、そのデータを自分にもしっかりフィードバックできました。これまでは2人のコメントがバラバラなことが多かったのですが、今回は直したい症状が同じような感じだったり、3号車のやっている事や言っている事が自分にも活かせるかもしれないと感じたので、しっかりとアジャストできました。全体がものすごく僅差で争っている中、僕もしっかりと戦えていたと思います。決勝に対しては、今シーズンは毎回スタートをうまく切れているので、ポジションをもう少し上げたところでレースを戦いたいです。去年も上位で戦えたレースが少しありましたが、後方で走っているよりも得るものが沢山あった、価値のあるレースになったので、今回もそういう内容を目指して、今後につながる濃いレースが出来ればいいなと思っています。

3号車 村田卓児エンジニアのコメント

持ち込んだクルマの状況も良かったのか、走り出しからそんなに悪くなく、大きな変更ではなくちょっとずつアジャストしていくといったような進め方でした。ただ前回の富士で、セクター1と2は速かったもののセクター3で失速するという状況があって、まだやってみないと分からない部分はあると思っています。実は富士の決勝ではパーツが1つ破損してしまっていたので、その影響もありましたけどね。ただ今のSUPER FORMULAはコンディションにも非常に左右されますし、難しいレースですから、なるべく合わせこむつもりではいます。先頭からスタートできるのは非常に助かりますね。

4号車 阿部和也エンジニアのコメント

山下選手のポールポジションはチームにとって非常に良い結果だったと思います。一斗に関しては、山下選手と0.25秒差。タイム差としては大きくなく、よく頑張ったと思います。予選のセットアップに関しては「これでいいのかな」という予測はありつつ、選択肢は2つ程残っていて、そのうちの1つでトライしたらそれなりに戦えたので、それはポジティブですね。今日の予選はタイム差が非常に小さく、ワンミスでポジションを下げてしまう状況だったので、その中で最低限のことはできたし、現状のベストを出せました。決勝に向けては、富士の反省から持ってきたセットなので、明日の天候が読めませんが、どちらの天気になってもそこそこ走るんじゃないかと思っています。

第5戦(8月25日・晴/ドライ)

決勝レポート

最終ラップの猛追届かず山下健太選手2位も、小高一斗選手8位入賞で2台そろってポイント獲得の週末に

山下健太選手の7年ぶりのポールポジション獲得に喜びあふれた予選日から一夜明け、全日本スーパーフォーミュラ選手権の第5戦が、暑さ続くモビリティリゾートもてぎで行われた。コース上ではその暑さを吹き飛ばすほどの熱戦が繰り広げられ、山下選手は2位フィニッシュ、小高一斗選手は8位フィニッシュを果たし、2台そろって入賞という結果を得た。

決勝レースに向けて行われるフリー走行は、午前9時10分から30分間。わずかに雨粒が落ちてきていたことからウエット宣言が出されたが、路面を濡らすほどではなく、各車がドライタイヤで走り込みを重ねていった。山下選手が15周を走行し1分34秒885で6位、小高選手が12周で1分34秒909をマークし8位という結果だった。

決勝レースの最中に雨が降ってくるという天気予報があり、レースに向けてコース上のスケジュールが進んでいく間にも、周囲には黒い雲が出始めた。ただサーキットの上空は青空も見え、降雨の心配はなさそうに見える。気温33度、路面温度は37度、ドライコンディションのもとで37周の決勝レースがスタートした。

ポールシッターの山下選手は順当なスタートを切ってポジションをキープ。小高選手は好スタートで1台をとらえ、6番手に浮上してオープニングラップを終えた。スタート直後であらゆるポジションでバトルは展開されるものの、序盤は大きな順位変動はなく、山下選手がトップ、小高選手が6番手で周回が重ねられていく。そしてタイヤ交換が可能となる10周目に差し掛かったところで、山下選手の背後に迫っていた1台がピットイン。先にピットインして逆転を狙うアンダーカット作戦を警戒した山下選手とチームだったが、ここで交換してしまうと後半スティントが27周と長くなってしまい、終盤にタイヤがきつくなってしまうと考えたことから、ステイアウトを選択する。

小高選手は11周を終えたところでのタイヤ交換をチョイス。スタートこそ良かったものの、5周を過ぎたあたりからラップタイムがダウンし、苦しくなっていたのだ。タイヤ交換を済ませると暫定13番手でコースに復帰し、再び追い上げを開始した。タイヤを替えた後のペースは良く、13周目には1分35秒732で自己ベストを更新し、翌周は1分35秒504までタイムを削って見せた。順位も、自力オーバーテイクでのポジションアップはなかったものの、後からタイヤ交換に入るライバルたちを次々にかわし、全車がタイヤ交換を終えた24周目には5番手まで押し上げていた。終盤に入るとタイヤにマージンのあるドライバーたちが次々と襲い掛かり、次第にポジション後退。それでも8位には踏みとどまってチェッカーを受け、入賞を果たした。

ステイアウトを選択した山下選手は、依然コース上に留まりトップを快走する。ただ、アンダーカットを狙って早めにタイヤ作業を行った中で先頭を走る「裏1位」とのギャップは徐々に縮まっていき、17周目には20秒を切ってしまう。ピットロードを通過する時間とタイヤ交換の作業時間とを考えると、トップを守ることは難しいが、それでも何とか表彰台圏内は留まりたいところ。そのために、すぐ後ろを走っていたライバルのアンダーカットを阻止するべく23周終了時点でピットイン。ただ相手のアウトラップの速さが勝り、山下選手がコースインした瞬間、相手に交わされてしまい2番手のポジションを明け渡してしまう。

さらに1台の先行を許し、暫定4番手で終盤戦に入った山下選手は、フレッシュタイヤを武器に猛プッシュ。26周目のダウンヒルストレートで1台をとらえ、3番手を取り戻すことに成功する。ただトップ2台は山下選手よりもラップタイムが速く、少しずつではあるが差を拡げられている状態だった。ゴールまであと3周を残した34周終了時点では、2番手との差は7.6秒。その後、トップを走る車両にトラブルが発生しリタイア、山下選手は自動的に2番手に順位が上がった上に、代わってトップに立った車両ともギャップが詰まった状態に。しかも相手はオーバーテイクシステム(OTS)をほとんど使い切った状態で、山下選手は70秒以上残っている。迎えたファイナルラップでは、両者のギャップは約4秒。山下選手はホームストレートからOTSを推し続け猛チャージ。セクターごとに見る見るうちに差を削っていったが、あと1.6秒届かず。2番手でチェッカーを受けた。ポールポジションスタートだっただけにポジションを落としたことは悔やまれるが、3月の開幕戦鈴鹿大会以来、今シーズン2度目の表彰台獲得となった。

決勝結果

Pos. No. TEAM DRIVER TIME/DIFF LAPS Best Time
1 5 DANDELION RACING 牧野任祐 1:00’10.235 37 1’35.234
2 3 KONDO RACING 山下健太 1.603 37 1’35.284
3 16 TEAM MUGEN 野尻智紀 4.261 37 1’35.976
8 4 KONDO RACING 小高一斗 23.838 37 1’35.504

参加台数:21台 出走台数:21台

FASTEST LAP

No. TEAM LAPTIME
64 Naoki Yamamoto / PONOS NAKAJIMA RACING SF23 1’34.963 (23 / 37) 182.004 km/h

近藤監督のコメント

近藤監督 PHOTO

健太はポールポジションからのスタートでしたが、レースペースが今一つだったこともあってどういった戦略を立てるのかは非常に難しかったですね。6号車に対しては動かないことを選択したけど、向こうのペースが良かったので暫くしたらギャップは削られていたし、5号車に対しては向こうのピットインに反応してインラップをプッシュさせたはさせたけど、結果的には足りずに逆転されてしまいました。小高も前半スティントと、後半スティントも最後の方はタイヤが垂れてきてしまって、それでも何とか踏ん張って8位に残ってくれました。2人ともきっちりといい仕事をしてくれたので、次のレースにつなげるためにも、ここから約1か月半のインターバルで良いところと悪いところをしっかり分析したいと思います。去年と比べれば内容も結果も良くなっていて、チーム全体のモチベーションも上がっていますから、残り2大会4レースのどこかで勝ち星を挙げたいですね。

3号車 山下健太選手のコメント

山下健太 PHOTO

牧野任祐選手、太田格之進選手には完敗のレースでした。これまでも決勝でのペースはあまり良くなかったですし、朝のフリー走行の段階でも格段に良くなっていたとは感じなかったので、厳しいレースになるだろうとは思っていました。太田選手がミニマムに近い周回数でタイヤ交換に行ったときにそれをカバーしに行く(同じタイミングでピットに入る)かどうかが今日のポイントで、自分としてはカバーしたほうが良いかなと思っていたのですが、結果的にはミニマム組がレース後半にずるずるとペースが落ちていっていたので、あそこで入らなくてよかったなと今は思っています。今日出来る事はやったと思いますが、勝つにはまだ全然力が足りていないなというのが今日の印象です。今回はポールポジションを獲れましたが、次戦の富士でも同じようなパフォーマンスを出せるとは思っていません。予選でまた前に行けるよう、しっかりと準備をして次戦に臨みたいと思います。

4号車 小高一斗選手のコメント

小高 一斗 PHOTO

スタートがうまく決まって、最初の3周ぐらいもペースが良く「いい滑り出しだな」と思っていたのですが、周りがタイヤに熱が入ったあたりから僕の方がタイヤが垂れだして、5周目ぐらいから前のクルマについていけなくなってしまいました。後ろも迫ってきたので、後半がきつくなるのは分かっていましたが早めのタイヤ交換を選びました。2セット目のタイヤも走り出してから10周ぐらいはペース良く走れましたが、やはり最後の10周ぐらいはきつかったです。でもそれ以前にギャップを築けていた分でポイント圏内には留まることができました。今まではライバルたちに対して一緒に走る事すらできていなかった感覚でしたが、今回は、まだまだ負けてはいるものの何となく一緒に戦えるような感覚、レースできるような感触を得ることが出来たので、これを次戦の富士でも続けられるよう、インターバルを有意義に使っていきたいと思います。3号車も良い結果を残してくれて、チームとして良いデータを得られたと思うので、より強くなって富士に挑みたいです。

3号車 村田卓児エンジニアのコメント

すぐ後ろを走っていた6号車がピットインに向けて動いた時に我々も合わせて動こうかという選択肢もありましたが、スティントの終盤にタイヤが垂れてきてしまうのが目に見えていたのでそこで反応することはやめました。ただ、ほぼ同じタイミングでタイヤ交換した5号車についていけなかったのは残念です。朝のフリー走行の感触は悪くなかったものの、飛び抜けて良いわけでもなく、今回は優勝したドコモのような次元にはいませんでした。富士に向けて課題は山積していると考えています。

4号車 阿部和也エンジニアのコメント

富士の決勝レースでダメだった部分を修正して臨みました。改善はされましたが、予想していたほど良くはなりませんでしたね。スタートは一斗が頑張ってポジションアップしてくれました。ペースが上がらなかったので、リスクは承知の上でミニマム交換を選ぶしかなかったです。予選はだいぶ戦えるようになりましたが、その位置を決勝でキープするのが難しいですね。シーズン前半を考えれば、ここの位置に来られるようになっただけでもだいぶ良くはなってきましたが、ここまでくるとやっぱりレースペースももう少し欲しくなってきます。次までに改善できればと思っています。

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