先日、6月20日(土)~23日(日)にドイツのニュルブルクリンクサーキットにて行われた「Nürburgring 24時間レース」に参戦させていただきましたので、以下の通りご報告申し上げます。
プロジェクト立ち上げ、チーム結成以来、VLN1、VLN3、QFレースに参戦してきましたが、この度、第47回のニュルブルクリンク24時間レース(6月20日~23日)に参戦しました。
2018年モデルのNISSAN GT-R NISMO GT3を駆る45号車は、松田次生/高星明誠/藤井誠暢/トム・コロネルのドライバーラインナップで難コースに挑みます。
今年のニュル24時間は160台がエントリーしており、45号車が参戦するSP9クラスには32台が参戦しました。
強豪ひしめくクラスに近藤真彦監督が中心となり、アドバイザーのミハエル・クルムやエンジニア、メカニック、各スタッフに加えて、NISMOパフォーマンスセンター(NPC)でNISMOマイスターとして活躍中のメカニック3名が参加し、チームと共に24時間レースに初挑戦しました。
スターティンググリッドは、20日と21日に行われた予選セッションのタイムと、5月に行われた予選レース及びVLNでの実績等で出場権を得た28台によるトップクオリファイで決定しますが、45号車は総合25番手から長丁場の24時間レースを戦うことになりました。
そして、決勝レースは現地時間の22日(土)午後3時30分にコロネルが乗り込み、24時間先のチェッカーフラッグを目指してローリングスタートを切りました。
近藤監督の指示の下、コロネルからバトンを受け継いだ高星、松田、藤井という順でドライバー交代しながら周回を重ねていった45号車は、何度も訪れるピット作業でも大きなミスやトラブルを出すことなく、順調に走行を続けていきました。
また、24時間レース特有の夜間走行では、各ドライバーはダブルスティントでつなぎ、ここでもノートラブル、ノーミスで走行しました。
加えて、ミハエル・クルムアドバイザーは一睡もする事無く戦況を見つめ続け、時には無線で、時には直接、ドライバーやエンジニア、更には近藤監督にもアドバイスを送るなど最後までチーム内での重要な役割を担いました。
夜が明け、朝を迎えた後も他車とのバトルを展開しながら走行し、レース終盤には一時総合8位まで順位を上げるまでの活躍を見せました。
そして、大詰めのラストスティントには藤井がフィニッシュドライバーとしてマシンに乗り込み、総合10位、クラス9位でチェッカーを受けました。
尚、その後、上位のマシンに車両規則違反があったために失格となり、総合9位、クラス8位へ繰り上がりとなりました。
来年度に向けて、更なる好成績を目指して準備を進めたいと思います。
これ以上ない結果です。ミスやトラブルは99%ありませんでした。ドライバーもそうですが、メカニックたちが本当によく頑張ってくれました。
来年はプレッシャーになりますが、気を引き締めて戦いたいと思います。
・3年計画の初年にしてSP9クラス8位、総合9位について
基本的に勉強をしに行った訳ですが、まずはニュルに出場している上位チームのレベルが見たい、そして戦うその場に打ち解けたい、という思いがありました。
それが今年のテーマでした。ただレーシングチームですから、それだけでは…ということもあるので、完走して24時間のクルマのデータとタイヤのデータとドライバーのコメント取りは絶対にしなきゃだめだと思いました。
とにかく口うるさく、「今年はノーミスでチェッカーを受けるんだ」と。また、ドライバーに対しても、目の前のひとつふたつの順位を上げるためにきつい努力をするよりも完走できるのであれば、こちらを選ぶと言いました。
24時間を通してお願いしたことは、ドライバー4人にとってストレスに値するだろうと思っていました。彼らのスピードはもう十分にわかってますから。
速さがあるからうちに来てもらったことを伝え、なおかつそのスピードを活かせきれないのはフラストレーションになるだろうが、そこはガマンしてくれ、と。
それは私も同じだと言いました。自分たちで話し合いをし、攻めたい気持ちを抑えて25kmあるコースの中で乗っていい縁石とそうでない縁石を判断することもしました。
基本的に『縁石には乗るな』と伝えました。今年の序盤、他チームでサスペンション系のトラブルがいくつかあったんです。
既に改良は加えられていましたが、念には念を入れて石橋をたたきました。事前の生きた情報は大事ですからね。
また、ルーティンが全部で13回あったのですが、スティントごとのドライバー交代やタイヤ交換、それに関わるピットの動きが回を重ねるごとにすごくしっかりしてきました。
これもドライバーがスケジュールどおり走ってくれたからこそできたわけで、良かったと思います。
ドライバーにはエンジン、駆動系、足回り含め、クルマに負荷をかけないような走りをするようお願いしました。
コースにはジャンプする(跳ねる)箇所が2つあるのですが、『うちはジャンプしなくていいから』と言いました。
ドライバーには結構負担をかけたと思うけれど、最後には結果が出たので彼らもすごく喜んでいました。私もすごく良かったと思うし。
ニュル1年目としては上出来だと思いますね。
・4選手の活躍について
トム(コロネル)はもう十分にニュルを知り尽くしている選手。ニュルならではのスタートをよく知っており、予選順位のまま戻ってきてくれました。
『25位でスタートして、1周終わって25位で帰ってきたらパーフェクトだ』と彼には言ったんですが、そのとおりになりました。
とにかく前に出ることを考えず、そのままで帰ってきてくれと。見事やってのけましたね。(松田)次生はアタックを担当したんですが、彼なりに懸命の走りを見せてくれました。
やはり前の24台は百戦錬磨のドライバーが揃ってましたが、予選順位はあまり気になりませんでした。
彼は国内外で耐久レースのキャリアも十分にあるし、その点はレースでも心配なかったですね。
藤井(誠暢)はチームとスーパー耐久で一緒に長らく仕事をしていますが、彼には大きな役割を与え、最後にチェッカーを受けてもらいました。
自分の仕事としてしっかりと役目をこなしてくれたと思います。つねに冷静でしたね。
一番若手の高星(明誠)に関しては、4人の中でももっとプッシュして走りたいと思っていたんじゃないでしょうか。
その気持ちを抑えて走ってもらいましたが、しっかりと判断して走ってくれました。
・24時間、戦いへのアプローチ
これまで、ニュル以外の24時間レースでは自分自身も出走するなど経験があるんですが、1時間ずつ24分割しているような気持ちで挑んでいました。
スタートから1時間経過したから残り23時間、ではなく1時間にまず集中する。それが終わってまた次の1時間…の繰り返し。
そういう風に刻んでいくと24時間は割とあっという間でした。
自分たちだけでレースを戦っているわけでなく、周りとの戦いでもあるので1時間ごとに状況は絶対変わるし、天気もそう。
今年はレースで雨の降らない安定したコンディションでしたが、都度考えて挑むという感じでした。
タイヤは3種類あって、そのうち2種類をうまく使いこなすことができたんです。
朝晩気温がぐっと下がったときと日中の暑いときときっちり分けて使うことができたのも良かったですね。ヨコハマタイヤがいい仕事をしてくれました。
それからニッサン・ニスモ、ヨコハマがメインとなって協力をしていただいたし、スポンサーであるケンウッド、モチュール初め各スポンサーの皆さんに対しても
来年に向けてのいいアピールができたと思います。
・ニュルの奥深さ、難しさ
基本的に私が知っているニュルは、もっとクルマが壊れていました。とくにトップ争いをしている10台、15台くらいはクルマが壊れたんです。
ターボがやられたり、エンジンのどこかに穴が開いてヒートアップしたり、駆動系ではギアやミッションが入らなくなったり…というのが何年か前まではよく見受けられたんです。
ですが、今のGT3車両は完成度がすごく高い。今回も残り12時間で18、19位を走っていて、このままノートラブルで走れたならベスト10、それ以上に入れると考えていたんです。
誰も後ろから来てないし、『よし!いい感じだ』と思っていましたが、(前方の他車が)潰れなかったですね。つまり淡々と走っていたんじゃそれ以上のポジションアップは無理なんです。
ニュルに出ていたメルセデス、BMW、アウディ、ポルシェのこの4強は壊れないですね。結局、壊れないから最後の3時間でバトルが始まるんです。
それまで間合いを取って走っていたのに、残り3時間ともなると『このままじゃトップが獲れない』とラップタイムが3秒ずつくらい上がり、コース上では接触も増えてくる。
結果、あっという間に何台も壊れましたからね。
1年目は様子見でしたが、2年目、3年目のチャレンジになるとそういうトップ争いに仲間入りをしなきゃいけない。
なので、2年目はラップタイムのアベレージを引き上げてレースする必要があります。クルマが壊れなければ、今年と同じくらいの順位は残せるでしょう。
3年目ともなると、抜く、抜かれるというバトルをやってベスト5を狙っていかなければならない。そう考えたら、ニュルでの優勝は本当に遠い場所なんです。
他力本願のいい結果は10位まで。自分たちで獲りに行く戦いをしない限り勝てないんです。
”獲る”ためには半端ないリスクが存在すると感じました。
・2年目に向けて
今年、1年目で”保険(完走)”が取れたので、2年目はプッシュできます。
もし2年目に12時間でストップしたとしても、そこで上位争いができているようなチームになっていれば、12時間でストップしてもOKだと思うんです。
逆に1年目で完走できていないと、2年目でそういう状況になったときに『やっぱり完走しようよ』と守りに入ってしまいます。
そう考えると、2年目に向けて1年目に完走できたというのは、本当に大きな意味を持つと思いますね。
今言ったみたいに、1年目の結果があるので2年目はちょっと攻められる。ただ、ひたすら攻めた結果、早くに終わっちゃったということは避けなければいけません。
どこまで攻めていいかをきちんと計算しないと。
今回の展開で、このプロジェクトに携わってくれている企業の皆さんのモチベーションも上がったようですし、周りの反響も大きなものがありました。うれしかったですね。
また、このチャレンジで裏付けされたのは、これまで国内で長らくレース参戦し続けてきた経験が活きたということ。これも良かったと思っています。
しっかり完走するという目標を達成できてクラス8位というのは、正直出来すぎです。課題も見つかったし来年につながったと思います。
僕個人では、最近の24時間レースはあまり良い結果が出なかったのですが、今回本当にしっかりとレースができました。
メカニックたちもいい仕事をしてくれましたし、ヨコハマタイヤにも感謝です。
24時間を戦えるクルマを作ってくれたニスモ、メンテナンスしてくれたチームに感謝しかありません。
ドライバーも次につなげる良い仕事をしたと思いますし、チームに応えられるような仕事ができました。
来年はハードルが高くなりますね。今回見つかった課題もあるので、それを改善したいです。
KONDO RACINGとして初めてづくしのニュル挑戦。地元のライバル勢はここを走り込んでいてデータも豊富ですし競争力あるクルマが多いです。
そんな中で僕たちは結果を出すことができました。今年は、順位はともかく必ずチェッカーを受ける、ノーミスで行こうという目標があって、ペナルティも接触もゼロ。
新車の状態でレースを終えることができました。タイヤやメカトラブルもありませんでした。
全員力を100%出して頑張りつつ冷静にレースを進めていった結果の総合9位、クラス8位。
とても過酷なサーキットでドライバーとしてうれしいし、仕事に集中できたので達成感があります。
メカニカルトラブルはなく、ドライバーのミスもチームのミスもありませんでした。
すべてにおいて完璧な、100%の日本のスタイルを見せてくれました。このチームで戦えてうれしいです。